【プロ監修】ベタ基礎でもシロアリ被害が起きる!侵入経路と対策方法

ベタ基礎は床下全面をコンクリートで覆う構造のため、シロアリ被害を受けにくいと言われています。しかし、完全にシロアリの侵入を防げるわけではなく、様々な経路から侵入される可能性があります。
この記事では、ベタ基礎におけるシロアリの侵入経路と効果的な予防対策について詳しく解説します。
ベタ基礎と布基礎の違い
ベタ基礎は床下全面を鉄筋コンクリートで覆う構造で、建物全体を面で支えるのが特徴です。一方、布基礎は建物の外周部のみをコンクリートで支える構造です。
ベタ基礎は地面から完全に隔離されているため湿気が少なく、シロアリの侵入経路も限定されます。対して布基礎は床下が土のため湿気が多く、シロアリの侵入リスクが高くなります。
また、ベタ基礎は荷重が分散されるため耐震性も高いのですが、工事費用は布基礎より高くなる傾向があります。
ベタ基礎がシロアリに強いと言われる理由
ベタ基礎がシロアリに強いとされる理由は主に3つあります。
1つ目は床下全面がコンクリートで覆われているため、地面からの直接的な侵入を防げること。2つ目は湿気が少なく、シロアリの活動に適さない環境であること。3つ目は侵入経路が限定されるため、予防対策が立てやすいことです。
ただし、それでも完全にシロアリを防げるというわけではありません。
ベタ基礎でもシロアリ被害が起きる3つの理由
ベタ基礎でもシロアリ被害が発生する原因として、以下の3つが挙げられます。
- コンクリート打設時のセパレーター跡や配管貫通部などの構造的な隙間からの侵入
- 経年劣化によるひび割れや継ぎ目の隙間からの侵入
- 施工時の不備による隙間からの侵入
これらの弱点を把握し、適切な予防対策を講じることが重要です。それぞれ詳しく解説します。
基礎の構造上の弱点
ベタ基礎の構造上の弱点として、特に注意が必要なのはセパレーター部分と配管貫通部です。
セパレーターは型枠を固定するための金具で、コンクリート打設後も残されることが多く、その周囲に微細な隙間ができやすいです。また、給排水管やガス管などの配管貫通部も、施工時に必要な余裕を持って穴が開けられるため、配管とコンクリートの間に隙間が生じます。
これらの隙間はシロアリの侵入経路になりうるため、施工時の防蟻処理や定期的な点検が欠かせません。
経年による劣化とひび割れ
ベタ基礎も経年劣化の影響を受け、様々な要因でひび割れが発生します。主な原因として、温度変化による膨張収縮、地盤沈下、地震による振動などが挙げられます。
特に建物の隅角部や、コンクリートの打ち継ぎ目には応力が集中しやすく、ひび割れが発生しやすい傾向があります。コンクリートの収縮によるごくわずかなひびも、初めは問題なくとも時間とともに拡大する可能性があります。
シロアリは0.6mm程度の隙間があれば侵入できるため、一見して問題ないように見えるひび割れでも、シロアリの侵入経路となる可能性があります。このため、定期的な点検でひび割れの有無を確認しなくてはなりません。
補修には専用のシーリング材や補修モルタルを使用し、必要に応じて防蟻処理も併せて行うのがおすすめです。
施工時の不備による隙間
施工時の不備による隙間の発生は、シロアリ被害の大きな要因となります。特に注意が必要なのは、コンクリートの打ち継ぎ部分です。ベタ基礎は通常、ベース部分と立ち上がり部分を別々に打設するため、その継ぎ目に隙間が生じやすくなります。
また、水抜き穴の処理も重要なポイントです。施工時に設けられる水抜き穴は、工事完了後に適切に埋められていないと、シロアリの侵入経路となってしまいます。基礎パッキン周りの施工不良や、配管貫通部の処理が不十分な場合も、シロアリの侵入リスクが高まります。
施工時の品質管理を徹底し、各部位の接合部や貫通部の処理を確実に行えば予防できます。
シロアリが侵入する5つの危険ポイント
ベタ基礎においても、シロアリが侵入しやすい危険ポイントが存在します。これらの箇所を把握し、定期的な点検と予防措置を講じることが重要です。
主な危険ポイントとして、基礎断熱部分、配管貫通部、水抜き穴、玄関・勝手口周り、基礎のひび割れの5箇所があります。以下、それぞれの特徴と対策について詳しく説明します。
基礎断熱部分
基礎断熱工法で建てられた住宅は、断熱材が基礎に密着して施工されています。外断熱工法の場合、断熱材と基礎の間に生じた微細な隙間から侵入し、断熱材自体をシロアリが食害する可能性があります。
断熱材の種類によっては、シロアリの好む環境にもなってしまいます。これを防ぐためには、防蟻処理された断熱材を使用し、定期的な点検を行うことが重要です。
断熱材と基礎の接合部に隙間が生じないよう、施工時に配慮する必要もあります。既存の住宅では、断熱材の外周部に防蟻処理を施すことで、シロアリの侵入を予防することができます。断熱性能を維持しながら、シロアリ対策も両立させなくてはならないのです。
配管貫通部
給排水管やガス管、電気配管などの配管貫通部は、シロアリの侵入経路となりがちです。
これらの配管は基礎を貫通して設置されますが、その際に配管径よりもやや大きめの穴を開ける必要があります。この配管と基礎の間に生じる隙間が、シロアリの侵入口となる可能性があるのです。
また、配管周りは湿気が溜まりやすく、シロアリの活動を促進する環境となりがちです。対策としては、配管貫通部周りに防蟻材を充填することや、専用のシーリング材で隙間を埋めることが挙げられます。
新築時には、配管スリーブを使用して確実な防水・防蟻処理を施しましょう。既存の住宅の場合は、配管周りの定期的な点検を行い、隙間や劣化が見られた場合は速やかに補修することが重要です。特に水回りの配管周りは注意しましょう。
水抜き穴
水抜き穴は基礎工事時に必要な排水のために設けられる穴ですが、シロアリの侵入経路となりやすい箇所です。
施工後に適切に塞がれていない場合や、塞いだ部分が劣化した場合に問題となります。工事完了後に水抜き穴を防蟻材入りのモルタルで確実に塞ぐことで対策できます。ただし、完全に塞いでしまうと、万が一の床下浸水時に排水ができなくなる懸念もあるため、状況に応じて判断が必要です。
水抜き穴周辺の地面が湿っている場合は、排水環境を改善しなくてはいけないでしょう。
玄関・勝手口周り
玄関や勝手口周りは、建物の中でも特にシロアリの侵入リスクが高い場所です。これらの場所は、基礎と土間コンクリートの接合部や、タイルと基礎の継ぎ目など、複雑な構造となっているためです。
特に玄関ポーチと建物本体の接合部は、施工の難しさから隙間が生じやすく、シロアリの格好の侵入経路となります。また、この部分は雨水が溜まりやすく、湿気も多いため、シロアリの好む環境となります。
対策としては、玄関周りの定期的な点検と、継ぎ目部分の適切なシーリング処理があります。
基礎のひび割れ
基礎のひび割れは、時間の経過とともに避けられない問題です。特に地震や地盤沈下の影響を受けた場合、激しくひび割れてしまう可能性があります。ひび割れは、シロアリの侵入経路となるだけでなく、湿気の侵入口にもなります。
対策は、発見したひび割れをすぐに補修することです。小さなひび割れであれば、エポキシ樹脂などの補修材で埋めることができます。大きなひび割れや構造的な問題がある場合は、専門業者に見てもらう方が効率的です。
自分でできるベタ基礎のシロアリ予防対策
ベタ基礎住宅でも、自分でできるシロアリ予防対策がいくつかあります。具体的な方法を見ていきましょう。
定期的な目視点検と補修
ベタ基礎の床下や外周部は、少なくとも半年に1回は目視点検を行いましょう。点検時にはLEDライトなどの明るい照明を使用し、暗い場所も見えるようにします。
コンクリートにひび割れを発見した場合は、市販の補修材で早めに対処します。玄関周りのタイル目地や土間コンクリートの継ぎ目も要注意です。目地材の劣化や隙間があれば、シロアリの侵入経路となる可能性があります。
点検と同時に、蟻道と呼ばれる泥状の通路がないかも確認しましょう。蟻道を発見した場合は既に被害が始まっている可能性が高いため、専門業者に相談してみるといいでしょう。
水周りの漏水チェック
水周りの漏水は、湿気を増やしシロアリを誘引してしまいます。特に浴室、洗面所、キッチンなどの水回り設備の配管周りは定期的なチェックが重要です。床や壁の湿り気や異臭を確認します。
排水管の詰まりや水漏れも要注意です。トイレの床がふわふわしている、壁紙がふくらんでいるなどの異常があれば、すぐに対策しましょう。ベタ基礎は床下全面がコンクリートで覆われているため、漏水が起きても気づきにくい傾向があります。そのため水道メーターのパイロット表示を定期的にチェックし、普段使用していない時間帯に回転していないか確認すると見つけられます。
給湯器や温水器などの設備機器からの水漏れにも注意が必要です。機器の下や周辺の床に水染みがないかチェックしましょう。
換気対策
ベタ基礎住宅でも、床下の換気が不十分だと湿気が溜まり、シロアリの好む環境が作られてしまいます。
まず換気口や床下換気扇が正常に機能しているか確認しましょう。換気口の目詰まりや換気扇の故障があれば、早めに清掃や修理を行います。また換気口の周りに物を置いて通気を妨げていないかもチェックします。必要に応じて除湿機も設置しましょう。
床下収納庫がある場合は、扉を完全に密閉せず、少し隙間を設けて通気を確保するか、頻繁に開けて空気の入れ替えをするようにしましょう。
短いセパレーター金具に変更する
ベタ基礎の施工時に使用するセパレーター金具は、シロアリの侵入経路となるリスクがあります。
特に長いタイプのセパレーターは、基礎の内側から外側まで貫通してしまうため、その隙間からシロアリが侵入する可能性があります。この対策として、基礎内側にのみ設置する短いタイプのセパレーター(半セパ)を使用できます。
半セパであれば外側まで貫通しないため、シロアリの侵入リスクを大幅に低減できます。既存の住宅で長いセパレーターが使用されている場合は、セパレーター周りを定期的にチェックし、隙間があれば防蟻用のシーリング材で埋めるましょう。
ただしセパレーターの種類は構造強度にも関わるため、必ず専門家に相談の上で検討してください。
専門家に依頼すべき3つのケースと依頼のポイント
ベタ基礎住宅でも、以下のような場合は専門家への相談を検討すべきです。まず築5年以上経過している場合です。新築時の防蟻処理の効果は約5年と言われており、その後は定期的な再処理が推奨されます。
次に基礎や配管周りに目立つ劣化やひび割れがある場合です。これらは放置するとシロアリの侵入経路となる可能性があります。
そして実際にシロアリの痕跡や被害を発見した場合は、すぐに専門業者に相談しましょう。一般的な駆除方法には、ベイト工法やバリア工法などがありますが、被害の程度や建物の状況によって最適な方法は異なります。
被害が広範囲に及ぶ場合は、床板の一部解体や、土台の交換など大がかりな工事が必要になることもあります。
業者選びで失敗しない3つのポイント
シロアリ対策の業者選びは、家の長期的な保全に関わる重要な決定です。失敗しないために、以下の3つのポイントを重視して選定を行いましょう。
必要な資格と実績
まず確認すべきは、公益社団法人日本しろあり対策協会の認定を受けた「しろあり防除施工士」の在籍です。この資格は、シロアリの生態や防除技術、安全な薬剤使用について専門的な知識を持つことを証明します。
次に、地域での施工実績もチェックします。ベタ基礎住宅での施工経験が豊富か、過去の施工事例やお客様の声を確認できるかを見ましょう。特に、自社で施工部隊を持っているか、外注に依存していないかも重要なポイントです。
また、建設業許可の有無も見ておくと、補修工事が必要になった場合に適切に対応できる体制があるかどうかの指標となります。
適正な費用の目安
シロアリ対策の費用は、建物の状態や規模によって異なりますが、ベタ基礎住宅の一般的な予防処理の場合、30坪程度の住宅で8万円から15万円程度が相場となります。
この費用には、
- 床下全体への薬剤散布
- 基礎と土台の接合部への重点的な処理
- 報告書の作成
などが含まれます。ただし、以下のような場合は追加費用が発生する可能性があります。
被害箇所の処理や補修
床下の状態が悪いときの前処理(清掃や補修)
その他建物の構造上、作業が困難な箇所があるときの工事や特殊な機材
重要なのは、見積もり内容の透明性です。作業内容、使用する薬剤の種類と量、保証内容など、すべての項目が明確に示されているかを確認しましょう。
複数の業者から見積もりを取り、内容を比較検討することをおすすめします。極端に安価な見積もりや、逆に高額すぎる見積もりには注意が必要です。
よくある質問
Q:理想のシロアリ点検の頻度はどのくらい?
シロアリ対策における点検頻度は、建物の状態や環境によって異なりますが、専門業者による点検を年1回、自己点検を季節の変わり目(年4回程度)に行うことをおすすめします。年1回の点検は、通常春から初夏にかけて行うのが効果的です。シロアリの活動が活発になる時期で、被害の兆候を見つけやすいためです。
特に注意が必要なのは、梅雨時期や台風シーズンの後です。これらの時期は湿気が多くなり、シロアリの活動が活発化する可能性があります。また、建物に何らかの変化(リフォームや設備の追加など)があった場合は、臨時の点検を行うことをおすすめします。工事による建物への影響やシロアリの侵入リスクを確認するためです。
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