シロアリの見分け方【基本的な知識と対処法について】

シロアリは家屋の構造を侵食し、深刻な被害をもたらす害虫の一つです。しかし、シロアリの被害は初期段階では気づきにくく、適切に対応しないと取り返しのつかない事態に発展しかねません。
そのため、シロアリを早期に見分けるための基本的な知識を身に付けることが大切です。本記事ではシロアリの見分け方をはじめ、基本的な知識と対処法について詳しく解説します。
シロアリとはどのような害虫か
シロアリの基本的な特徴
シロアリは、私たち人間社会と同じように役割分担をして生活する社会性昆虫です。
土壌や木材を好み、家屋の木材部分や家具などを食害する害虫として知られています。その見た目は、道で見かけるクロアリに似ていますが、異なる生態を持つ昆虫です。
シロアリは全世界で約3,000種類存在し、その中でも木造の建物に被害をもたらすのは約104種類です。現在日本には24種類のシロアリが分布し、そのうち以下の4種類が主要な家屋害虫といわれています。
●イエシロアリ
●ヤマトシロアリ
●ダイコクシロアリ
●アメリカカンザイシロアリ
シロアリは、梅雨や夏場の湿度が高い季節に特に活発になります。木材内部を侵食しながら進むため、外見からは被害を察知しにくいです。
シロアリが木材を侵食する理由
シロアリは木材に含まれるセルロースを栄養源とし、家屋の柱や床材、家具を内部から食害します。
この行動により建物の耐久性が著しく低下し、場合によっては倒壊のリスクも生じます。
日本に生息するシロアリの特徴と見分け方
1. イエシロアリ
特徴
イエシロアリは、最も広く見られるシロアリで、日本の住宅におけるシロアリ被害の大部分を占めています。
体長は約6〜8mm、体は黄褐色、羽は乳白色または淡黄色で体が柔らかいのが特徴です。特に湿度の高い場所を好み、床下や壁の中、浴室に巣を作ります。
イエシロアリは、木材を食べるだけでなく、木材内部に巣を作って集団で生活します。巣を発見するのが難しく、被害が広がる前に見つけて駆除することが重要です。
見分け方
イエシロアリの羽アリは体長が約10mmで、翅が前後に長いのが特徴です。また、翅の大きさが均等で、黒い色をしています。
羽アリが飛ぶのは主に春から夏にかけてで、この時期に羽アリを発見した場合はイエシロアリの巣が家屋内に存在する可能性が高いです。
生息地域
千葉県以西の温暖な地域
2.ヤマトシロアリ
特徴
ヤマトシロアリは、イエシロアリと並んで日本におけるシロアリ被害の主な原因です。
体長は約7〜8mmとやや小柄で黒色に近い茶色をしています。湿気が多い場所を好み、床下や屋根裏の木材に被害を与えることがあります。
見分け方
ヤマトシロアリの羽アリは、イエシロアリと比較して翅が短めで、前翅が後翅よりも長いです。体はやや黒っぽく、翅もやや濃い色をしています。羽アリが飛ぶのは主に春の暖かい時期です。
生息地域
北海道北部を除いた日本全土
3.ダイコクシロアリ
特徴
ダイコクシロアリは、ヤマトシロアリよりも比較的大きく、体長は約10〜12mmです。このシロアリは主に乾燥した木材を好んで食べるため、乾燥している場所や屋根裏、木材の表面で多く見られます。
木材の内部に巣を作ることは少なく、木材の表面を中心に被害を与えます。
見分け方
ダイコクシロアリの羽アリは、イエシロアリやヤマトシロアリよりもやや大きく、体色は白っぽく黒い線が目立ちます。また、翅はイエシロアリと比べて少し長く、飛ぶ時期は夏の初めに多いです。
ダイコクシロアリは、他のシロアリよりもやや活動的で、人目に付きやすいです。
生息地域
奄美大島以南の南西諸島、小笠原諸島
4.アメリカカンザイシロアリ
特徴
アメリカカンザイシロアリは、他のシロアリとは異なり外来種です。
体長は10〜12mm程度とやや大きく、色は頭と背中の一部は赤褐色、その他は黒色です。
日本では、家具や荷造材などとともに持ち込まれて屋内の乾材へと拡がり、家を建て直すほどの被害になります。
またアメリカカンザイシロアリは、木材の内部を食べて隠れた場所で活動するため、発見が難しく、被害が進行するまで気づきにくいです。
見分け方
アメリカカンザイシロアリの羽アリは、他のシロアリと比較して比較的大きく、前翅が非常に長いです。
また、羽の色が薄い灰色を帯びており、色の違いからも見分けやすいです。
飛び立つ時期は温暖な季節で、特に春と夏に活発に活動します。
生息地域
山形県上山市から沖縄本島まで多くの都府県に点在
シロアリとクロアリの違い
シロアリはその名の通り、白っぽい色をしていますが、形状や行動パターンが似ているため、一般的なクロアリと混同されることが少なくありません。
しかしシロアリは生物学上、「ゴキブリ目シロアリ科」、クロアリは「ハチ目アリ科」に分類されるため、実は全く異なる昆虫です。
では、両者を簡単に見分ける方法はあるのでしょうか。
外見上の違い
1.体の色
シロアリ:白っぽい体色で、半透明の外皮を持つ
クロアリ:黒や茶色の体色が一般的
2.胴体
シロアリ:くびれがなく、体全体が均一
クロアリ: 頭部・胸部・腹部がはっきり分かれて、くびれがある
3.触角の形状
シロアリ:まっすぐな形をした触角
クロアリ:曲がった触角を持つ
4.翅(はね)の見た目と形
シロアリ:細かい模様があり、前後の翅の大きさはほぼ同じ
クロアリ:翅脈が太い。さらに頭部に近い翅は長く、お尻付近の翅は短い
翅が取れたときの違い
シロアリとクロアリはどちらも「翅を落とす」昆虫です。
それぞれの羽アリが翅を落とした状態の場合、胴体が黒いため色だけでは区別がつきにくいですが、くびれがはっきりと出るため、翅があるときよりも見分けがつきやすいです。
シロアリとクロアリの行動特性の違い
シロアリとクロアリは、行動範囲や生活環境において明確な違いがあります。
シロアリは湿気を好み、木材内部や地中などの湿度が高い暗所で活動します。光や乾燥に弱く、主に家屋の基礎や床下、木造部分に隠れた巣を作り、内部を空洞化させて建材を破壊します。
社会性昆虫として群れで行動し、働きアリが木材を巣に持ち帰ることで、女王や幼虫に栄養を供給するのが特徴です。24時間365日活動を続けるため、被害が急速に拡大します。
一方、クロアリは乾燥環境にも適応し、地表を広範囲に移動しながら食料を探します。
見つけた食料はフェロモンで仲間に知らせ、巣に運び込む習性がありますが、木材を直接食べたり巣の材料にしたりすることはありません。そのため、クロアリの被害は主に食品汚染や衛生面に限られます。
これらの行動の違いから、シロアリとクロアリの生態は以下のように分けられます。
●活動場所 シロアリは木材内部や地中などの湿気の多い場所に生息し、直接的に建材を破壊します。 一方、クロアリは地表や比較的乾燥した環境で活動し、建材を損傷させることはありません。 ●食料の取り扱い シロアリは木材そのものを食料として、群れ全体で消費します。 これに対しクロアリは、外部で見つけた食料を巣に運び込み、蓄える習性があります。 ●被害の形態 シロアリの被害は、建物の構造部分に直接的なダメージを与えるのに対し、クロアリの被害は食品汚染や不快感といった間接的なものに留まります。 |
シロアリ被害の兆候
シロアリが家屋に侵入して被害を与えている場合、いくつかの特徴的な兆候が現れます。
これらの兆候を早期に発見することが、被害の拡大を防ぐ上で非常に重要です。
1. 木材の空洞音
シロアリは木材の内部を食べ進めるため、表面はそのままでも中身が空洞化しています。
木材部分を軽く叩いた際に空洞のような音がする場合は、シロアリ被害の可能性が高いです。
2. 蟻道(ぎどう)の発見
シロアリは乾燥や外敵から身を守るために、土や糞を混ぜた「蟻道」と呼ばれるトンネルを作ります。
これらは家屋の基礎や壁の隙間などに見られることが多く、確認された場合シロアリが活動している証拠となります。
3. 羽アリの発生
春から夏にかけて、シロアリの巣から羽アリが飛び立つことがあります。
光に集まる習性があるため、特に夜間に家の照明周りに羽アリが集まっている場合は要注意です。また、窓辺や床に羽アリの抜け殻が落ちている場合も、シロアリ被害の兆候です。
4. 木材や壁の変色・変形
シロアリに侵食された木材は、湿気を含みやすくなり、変色や変形が起こります。また、壁や天井にシミのような跡が現れる場合も、内部でシロアリが活動している可能性があります。
5. 糞の痕跡
シロアリの糞は小さな粒状で、被害箇所付近に集まります。これが床や家具の周辺に落ちている場合、シロアリの存在が疑われます。
シロアリ被害の対処方法
シロアリの被害が発覚した場合、最も重要なのは専門的な対応を迅速に行うことです。
市販の殺虫剤ではシロアリを完全に駆除することはできないため、プロの力を借りることが必要です。まず、シロアリが家屋内に侵入した原因を特定し、その侵入経路を徹底的に遮断します。
シロアリは湿気の多い場所を好み、床下や屋根裏で被害を拡大することから、これらの場所に対する調査を行い、湿気を取り除くための対策を施すことが大切です。
専門業者による調査を依頼することで、シロアリの巣がある場所を正確に特定し、根本的な駆除を行えます。駆除方法にはいくつかのアプローチがあり、最も一般的なのは木部処理、土壌処理、上回り処理の3つです。
これらを適切に組み合わせることで、シロアリの巣を完全に駆除できます。
プロによる対策であれば、家の隅々まで確実に処理が行えるため、再発のリスクを最小限に抑えることが可能です。
まとめ
シロアリは種類ごとに異なる特徴を持ち、見分け方を知ることが被害の早期発見に繋がります。
イエシロアリ、ヤマトシロアリ、ダイコクシロアリ、アメリカカンザイシロアリの4種類は、被害の範囲や食害の仕方が異なるため、適切な対策が求められます。
シロアリの被害が疑われる場合は、専門業者に依頼して早期の調査と駆除をしてください。
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