黒いシロアリの特徴と見分け方

4〜5月の昼間に黒いアリを見かけたら、それはシロアリかもしれません。シロアリといえば、その名の通り白色のアリをイメージするかと思います。
実際、シロアリは白っぽい色をしていることがほとんどですが、羽アリは別です。シロアリの種類によっては、クロアリに近い黒っぽい色をした羽アリが存在します。
本記事では、黒い色をした羽アリの特徴と見分け方、そして駆除方法について解説します。
黒い羽アリの正体は『ヤマトシロアリ』
春にかけて大量発生する黒い羽アリはヤマトシロアリと呼ばれるシロアリです。
一目見ただけでシロアリの羽アリだと気づくのは難しいかもしれませんが、シロアリの中にも黒い羽アリは存在します。
シロアリが羽アリになると黒くなる理由は、羽アリの役目に関係します。
黒い理由は紫外線から守るため
シロアリと聞くと、白いイメージが先行しますが、黒い羽アリは黒色で背中に黄色い線が1本が入っています。
ではなぜ黒いかというと、紫外線の光から身を守るためといわれています。
例えば、私たち人間が紫外線を長時間皮膚に当て続ければ、障害を引き起こしてしまうほど紫外線は強い波長の光を発します。それを考えると、地面の下で生活しているシロアリにとって紫外線は脅威そのものです。
そのため、繁殖のために外に飛び立たなければいけない羽アリたちは、紫外線から身を守るためにメラニン色素という、黒い色素を身にまとっています。
体の特徴について
シロアリの体型は、ヤマトシロアリに限らず全て寸胴型です。もちろんシロアリは昆虫なので、頭や胸、お腹の3つから成り立っているのは変わりません。
しかしシロアリの場合は、胸とお腹の境目にくびれがありません。つまり、胸とお腹がほぼ一体化している構造で、見た目が寸胴型に見えます。
この特徴は羽アリになっても変わらないため、実際に羽アリが現れたときは、くびれの有無によってシロアリとそれ以外の区別を簡単につけることができます。
飛び立つ時期
シロアリの羽アリが飛び立つ時期や時間帯は、種類によって決まっています。例えば春先の4〜5月にかけて発生するシロアリの羽アリは、9割方ヤマトシロアリの可能性が高いです。
一部の地域では、アメリカからやってきた外来種のアメリカカンザイシロアリが生息し、同じような時期に飛んでいることがあります。
ただこれは、体の色が褐色であったり、頭が赤かったり、体が1cm以上あるなどの違いからヤマトシロアリと区別することはできます。
飛び立つ時間帯
シロアリが飛び立つ時間帯は、午前、午後、夕方、夜といった大きな括りで示します。
その日の条件によってズレが生じてしまうことから、大まかな時間帯になりますが各シロアリが飛び立つ時間帯は以下の通りです。
種類 | 飛ぶ時間帯 | |
地下シロアリ | ヤマトシロアリ | 日中(主に午前) |
地下シロアリ | イエシロアリ | 夕方~夜 |
乾材シロアリ | アメリカカンザイシロアリ | 日中 |
乾材シロアリ | ダイコクシロアリ | 夕方~夜 |
例えば、ヤマトシロアリと同じように土の中で生活しているイエシロアリは、夕方から夜にかけて飛びます。
またアメリカカンザイシロアリは日中に飛び、同じ乾材シロアリに属するダイコクシロアリは夜に飛ぶといった違いが見られます。
さらに羽アリが飛びやすい条件は、以下の4点です。
- ●前日または、早朝までに雨が降っていた
- ●朝から晴れている
- ●気温が上がる(24~28℃)
- ●ジメジメしていて蒸し暑い
こういった条件の日に観察を行えば、高確率で羽アリの飛ぶ姿が確認できます。
黒いシロアリが発生したときの対処法
黒いシロアリ(羽アリ)が発生した場合、まずは冷静になることが大切です。
発生している場所が建物の外か中かによって対処方法が異なるからです。
家の外で発生した場合
建物の外で発生している場合は、そのほとんどが自然現象です。
日本にもともと生息している黒いシロアリが飛んでいるのは何ら不思議ではなく、自然の流れです。そのため、出ている黒いシロアリに対して対策を取る必要はありませんが、建物との距離には注目してください。
建物に隣接した場所で発生していた場合は、建物に被害を受けている可能性があるので、一度専門業者に見てもらうことをおすすめします。
家の中で発生した場合
建物の中で黒いシロアリが発生していた場合は、早急に対策を取らなければいけません。
実際室内で発生する場所は、浴室を始め、トイレやキッチンなどの水回りが多いです。理由としては、黒いシロアリであるヤマトシロアリは、湿気が多い場所を求めて行動しているからです。
もしこのような場所で発生していた場合、既に建物のどこかに大きな被害が出ている可能性が高くなります。
なるべく早く専門の業者に依頼し、適切な対策をとりましょう。
黒いシロアリを放置することによるリスク
黒い羽アリを発見した場合、それはヤマトシロアリの存在を示唆し、放置すると家屋に大きなリスクを伴います。
ヤマトシロアリは日本で最も一般的なシロアリで、その繁殖力と破壊力の高さから、早期に対策を講じないと深刻な被害をもたらすからです。
ここでは、ヤマトシロアリを放置するリスクについて詳しく解説します。
住宅への構造的な損害
ヤマトシロアリは木材を主食とし、家屋の木材に巣を作ります。
特に家屋の基礎部分や床下に侵入しやすく、見えない場所で活動を開始するため、初期段階で被害に気づくことが難しいです。
しかし、時間が経過するにつれてその食害が進行し、建物の耐久性や安全性が大きく損なわれます。例えば、ヤマトシロアリが床下や柱を食べることで、構造材が弱くなり、家の耐震性にも影響を与えます。
これにより、地震や強風などの自然災害時に家屋が倒壊する危険性が高まります。さらに、湿気がこもりやすい場所で活動するため木材が腐敗し、床が抜けることもあります。
これらの被害は、放置すると急速に進行して修繕費用が膨らんでしまうため、早急に業者への相談が必要です。
健康へのリスク
ヤマトシロアリは毒は持っていないものの、万が一噛まれてしまうとアナフィラキシーショックで意識が低下したり、皮膚の腫れを引き起こしたりする場合があります。
またヤマトシロアリが発生する場所は湿気が多く、カビや腐敗物が繁殖しやすいため、これらが空気中に漂うことでアレルギー症状や呼吸器疾患を引き起こす可能性もあります。
さらにシロアリの食害が進むことによって家屋内の換気が悪化し、湿度が高まるとカビやダニが増殖するリスクも増すため、住人の健康に深刻な影響を与えかねません。
経済的な損失
ヤマトシロアリの被害を放置すると、最終的には大きな経済的負担を強いられることになります。
シロアリによる食害が進むことで木材や構造材の交換が必要になり、その修繕費用は非常に高額です。
特に家屋の基礎部分や構造に影響が出ると大規模な工事が必要となり、数十万円から場合によっては数百万円の費用がかかることもあります。
さらに、ヤマトシロアリは数年にわたって巣を維持しながら繁殖を繰り返すため、その被害は時間とともに広がり、最終的には家全体に影響を及ぼすことから、早期発見・早期対策が最重要といえます。
黒いシロアリの対策について
一般的に駆除する方法として殺虫スプレーが挙げられますが、これはシロアリでなければ正しい対策といえます。
羽アリの種類 | 殺虫スプレーの使用 |
シロアリ | ✕ |
普通のアリなど | 〇 |
しかし、シロアリ駆除として殺虫スプレーを使用すると、問題が起きてしまいます。
それはシロアリの移動です。
私たちが表面に出ている黒いシロアリに薬剤を処理すると、表面にいる黒いシロアリは死にますが、壁や床下の内部に潜んでいるシロアリにはほぼ薬剤は届きません。
そして内部にいるシロアリは、この場所は危険だと判断して移動を始めてしまいます。その移動先が建物の外であればよいですが、大抵は薬剤が当たらない別の木材に移動します。
つまり、内部ではさらに被害が広がってしまう可能性があるのです。そのため、シロアリが発生しているときに私たちができることは、物理的排除のみになります。
物理的排除とは
物理的排除とは、例えば黒いシロアリを見つけたら、掃除機で吸い取る方法や粘着テープでペタペタと貼り付けて取り除く方法のことです。
この方法が一番シロアリに刺激を与えずに、簡単に駆除ができます。またシロアリの羽アリは限定的なため、暫くすると出なくなります。
そのため、出なくなるまで物理的排除を続け、いなくなったら出てきた隙間や穴などをテープで塞ぎ、その後の作業は専門業者に委ねましょう。
その理由は、ここから先の作業はシロアリの専門知識や経験が必要で、一般人にできる対策はほぼないに等しいからです。
まず黒い羽アリを見かけ、それがヤマトシロアリであったら、できる限り早く信頼のおけるシロアリ駆除業者に連絡してください。
プロに点検をお願いし、適切な対策を取ることをおすすめします。
まとめ
今回は春先に発生する黒いシロアリの特徴と見分け方、そして対処法について解説しました。
実際羽アリが出てしまうと、ビックリして間違った対処法をとりがちですが、まずは焦らず冷静に対処してください。
物理的排除後は、速やかにシロアリ専門の業者に相談しましょう。
シロアリ駆除のプロに任せれば、知識と経験を活かしながら安全でスピーディーな対処をしてもらえ、大切なお住まいを守ることができます。
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