シロアリの糞の特徴と効果的な駆除方法

砂粒のような糞をみつけたら、それはシロアリの仕業かもしれません。シロアリのなかには、家の中に糞を落としていく種類が存在するからです。
本記事では、糞を落とすシロアリの特徴と、効果的な駆除方法について解説します。
日本のシロアリの糞を見つけることは難しい
日本に生息するシロアリには、イエシロアリとヤマトシロアリがいます。彼らは家屋に侵入する際、蟻道と呼ばれるトンネルを作って外気や光を避けます。
蟻道とは、シロアリが水やエサなどを運ぶために作るトンネル状の通路で、土壌や木材のカス、糞や分泌物で作られます。そのため、日本のシロアリから糞を見ることはほとんどありません。
シロアリから糞が見られるのは、外来種であるアメリカカンザイシロアリによるものです。
アメリカカンザイシロアリとは
アメリカカンザイシロアリは、 北アメリカ原産の外来種です。
乾燥した木材に生息する乾材シロアリの一種で、日本では1976年に輸入された木材や家具に付着して運ばれ、分布を拡げていきました。
アメリカカンザイシロアリは、温度変化や環境湿度の影響を受けにくく、木材の中にあるわずかな水分で生活できます。
また巣を作る場所も他のシロアリとは異なり、イエシロアリとヤマトシロアリが土の中に巣を作るのに対し、アメリカカンザイシロアリは木材の中に巣を作ります。
アメリカカンザイシロアリの糞の特徴
アメリカカンザイシロアリの糞は、小さな粒状で乾燥した砂やゴマのような形をしています。大きさは0.6〜1mmほどで非常に硬く、縦に6本の筋が入っています。
またアメリカカンザイシロアリの糞は、食べた木材の色が反映されることから、白やベージュ、黄色や赤茶色、こげ茶色などの色が見られます。
そのため、どの木材が被害にあったかを探す手がかりにもなります。
アメリカカンザイシロアリの糞が見つかる主な場所
アメリカカンザイシロアリの糞は、木材がある場所や周辺であればどこでも見られます。
例えば窓枠・ドア枠、柱の周辺、外壁の下、長押(なげし)の隙間に散らばっていたり、エアコンの天面やカーテンレールから発見されたりすることもあります。また木材がなくても、部屋の壁に穴が開いていればそこから出てくることもあります。
その理由は、壁の中にある木材に巣を作って、糞を出すために壁に穴を開けているからです。穴の大きさは、1mm程度の画鋲で穴を開けたようなものから、糞などで塗り固められた5mm程度のものまでさまざまです。
糞と合わせて、糞が排出されている糞孔(ふんこう)も見つけられれば、アメリカカンザイシロアリが生息している箇所を見つけることが可能です。
アメリカカンザイシロアリの糞による被害
アメリカカンザイシロアリの糞自体は、無臭であるため有害ではありません。
しかし、アメリカカンザイシロアリはどんな木材でも食害するため、内部が空洞になり建材の耐久性に大きな被害をもたらします。例えば木材を3%食害されると、耐久性が約30%落ちるといわれています。
そのため、まず糞を見つけたらすぐには処分せず、見つけた場所で写真を撮り、糞の一部を袋などに入れて保存しておくことを推奨します。特に糞が落ちていた場所は、重要な手がかりになります。
プロのシロアリ駆除業者に依頼をする際も、現状調査がスムーズに進みます。
アメリカカンザイシロアリの駆除は可能か
アメリカカンザイシロアリの駆除は難易度が高く、完璧な対策を施すことは非常に困難です。
アメリカカンザイシロアリは他の日本に生息するシロアリとは異なり、乾燥した木材でも食害を行うため、侵入経路も多様です。一般的には、羽アリが飛来したり、家具の搬入時に一緒に侵入したりするケースが多いため、目に見える場所だけでなく、見えにくい場所にも被害を及ぼします。
また、アメリカカンザイシロアリの巣は非常に小さく、一本の木材に複数の巣が存在することがあります。よって、被害の範囲を特定することが非常に難しく、専門家であっても完全に確認するには、壁や天井を解体する場合もあります。
そのため、単に一箇所の巣を駆除しても、他の巣が残っている限り完全な駆除には至りません。
アメリカカンザイシロアリの駆除方法は、高度な専門知識と技術が求められます。プロの業者による詳細な調査と適切な駆除方法を実施することが重要です。シロアリ被害は早期に発見し、対策を講じることで被害を最小限に抑えることができます。
放置すると被害が拡大し、修復費用も高額になるため、疑わしい兆候が見られたら早めに専門業者に相談してください。専門業者に依頼した場合は、主に穿孔注入処理と毒ガスによる燻蒸処理の2つの方法で駆除を行います。
薬剤を木材に注入する「穿孔注入処理」
シロアリ駆除において、最も一般的で効果的な方法の1つが、ムース状の薬剤を木材に注入する穿孔注入処理です。
この方法は、日本国内はもちろん、海外でも広く用いられています。基本的な手順は以下の通りです。
●被害箇所の特定と範囲の予測 シロアリによる被害がどこまで進行しているのかを確認し、被害範囲を特定します。 これにより、薬剤の注入箇所と量を適切に決めることができます。 ●ムース状薬剤の加圧注入 被害箇所と予想される範囲に対して、ムース状の薬剤を圧力をかけて注入します。 この方法を用いることで、薬剤が木材の内部にしっかりと浸透します。 ●薬剤の広がり確認 薬剤が木材内部で広がり、他の穴から吹き出すまで行き渡らせることが大切です。 そうすることでシロアリが薬剤に接触し、効果的な駆除が可能となります。 ●注入穴の封鎖 注入した薬剤が漏れないように注入穴をしっかりと塞ぐことで、薬剤が長期間効果を発揮し、再侵入の防止にもつながります。 |
この方法は、業者間でさまざまなアプローチ方法があります。
例えば、被害箇所への薬剤注入を最小限にとどめ、ピンポイントで効果的な処理を行う業者もいれば、より広範囲に薬剤を使用し、屋根裏や壁内にも噴霧する業者もあります。
そのため薬剤の使用量や施工方法には違いがあり、環境への配慮や居住者の健康を考慮した適切な提案を行う業者を選ぶ必要があります。
毒ガスを使用した「毒燻蒸処理」
アメリカでは、シロアリ駆除は薬剤の代わりに、毒ガスを使った燻蒸処理が一般的です。
この方法では、建物全体をビニールシートで覆い、その内部に毒ガスを充満させることで、建物内のすべてのシロアリを一掃できます。
毒ガスを使用することで、非常に高い効果が期待できますが、費用面や実施条件を考慮すると、日本の住宅事情では現実的な方法とはいえません。
燻蒸処理のメリット | 燻蒸処理のデメリット |
●全てのシロアリを駆除可能 毒ガスが建物全体に行き渡るため、屋根裏や壁内、床下など、シロアリが隠れている場所も含めて完全に駆除できます。 ●実績がある アメリカでは、この方法で確実にシロアリを駆除した実績が多数あります。 | ●非常に高額 燻蒸処理は日本で実施した場合、数百万円以上の費用がかかるため、住宅用としては現実的ではありません。 ●施工場所の制限 近隣住民の許可を得ることが難しく、特に住宅地での実施は困難といえます。 ●残留効果がない 燻蒸処理には残留効果がないため、再度シロアリが侵入する可能性があり、予防効果には限界があります。 |
このように、毒ガスによる燻蒸処理は高い効果を発揮しますが、費用や施工条件などの制約から、日本ではあまり一般的には使用されません。
シロアリ駆除を行う際は、費用対効果や実施可能性を考慮した方法を選ぶことが重要です。
被害を最小限に抑えるためには早期発見が重要
アメリカカンザイシロアリの被害を早期に発見するためには、乾いた糞の発見が最も効果的です。ただし、被害の初期段階では糞がシロアリのものだと気づきにくく、発見が遅れることがあります。
糞は天井や窓枠、部屋の隅などに見られることが多いため、もし見つけた場合は速やかに専門業者に調査を依頼しましょう。また、羽アリの出現も被害を最小限に抑えるための大きな手がかりとなります。
特に6月から10月にかけて、羽アリが飛来し、木材に穴を開けて巣を作ります。穴から出る木粉や落ちた翅もシロアリ被害のサインです。
これらを早期に発見できれば被害を最小限に抑えれますが、発見が遅れると被害が広がるため、定期的なチェックと早期発見、早期対応が大切です。
まとめ
家の中で乾燥した硬い砂粒状の糞を見つけたら、アメリカカンザイシロアリが侵入している恐れがあります。
そのまま放置してしまうと、家全体に多大な被害をもたらすので、速やかに専門の業者に相談してください。
また近所でアメリカカンザイシロアリの駆除を行っていたり、近隣に輸入家具を取り扱っている店舗があったりしたら、一度専門家による調査をおすすめします。
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