シロアリの天敵とは?効果的な対策方法と駆除のタイミングを解説

シロアリには多くの天敵が存在します。しかし天敵がいても絶滅しないのは、シロアリならではの生態が関係しています。
この記事では、シロアリの天敵となる生き物たちの特徴と、天敵を利用した駆除が難しい理由を詳しく解説します。
シロアリの天敵 種類と特徴
シロアリの体は栄養価が非常に高く、多くの生き物にとって格好の餌食となります。クモやカエル、トカゲなどの小動物から、ツバメなどの鳥類まで、様々な生き物がシロアリを食べます。
中でも最大の天敵とされるのがクロアリです。名前は似ていますが、シロアリはゴキブリの仲間、クロアリはハチの仲間で、全く異なる生き物です。クロアリは肉食性で、シロアリの巣を襲って大量に食べることがあります。
シロアリが最も狙われやすいのは、新しい巣を作るために飛び立つ羽アリの時期です。この時期には、空を飛ぶ羽アリを鳥が食べたり、地面に降りた羽アリをクモやトカゲが食べたりします。
ここでは、シロアリの天敵を種類ごとに解説します。
昆虫類:クロアリ、アリ類
シロアリにとって最大の天敵とされるのがクロアリです。クロアリは強力な顎と攻撃性を持ち、シロアリよりもはるかに戦闘能力が高い昆虫です。シロアリの巣を発見すると集団で襲撃を仕掛け、働きアリや兵隊アリを次々と捕食していきます。
特に、オオハリアリなどのハリアリ類は積極的にシロアリを狩り、巣に持ち帰って餌とします。クロアリに襲われたシロアリは、通常は巣の奥深くへ逃げ込もうとしますが、逃げ場を失うと兵隊アリが犠牲となって他のシロアリの逃走時間を稼ぐ行動をとります。
一方で、シロアリとクロアリが同じ木材内で共存している事例もあります。必ずしも捕食関係だけではない複雑な生態系となっているのです。
クロアリ以外にも、オサムシやゴミムシといった地表性の肉食性昆虫もシロアリを捕食します。これらの昆虫は主に夜間に活動し、地表に出てきたシロアリを見つけると素早く捕らえて捕食します。
爬虫類:トカゲ、ヤモリ
トカゲやヤモリといった爬虫類もシロアリの重要な天敵です。これらの爬虫類は建物の周辺や床下、庭などで活動し、シロアリを発見すると素早く捕食します。特にニホンカナヘビやニホントカゲは、シロアリが地表に姿を現すと即座に反応して捕食します。
ヤモリは夜行性で、家屋の壁面や天井を自在に移動しながらシロアリを探します。特に羽アリの飛翔期には、ライトに集まってきた羽アリを効率的に捕食する姿を見せます。日本では古くから「家守(やもり)」として害虫を食べてくれる益虫として重宝されてきました。
爬虫類の捕食効率は高く、1匹のヤモリが1日に数十匹のシロアリを捕食することもあります。これらの爬虫類は粘着性の強い舌を持ち、シロアリを確実に捕らえることができます。ただし、シロアリは通常土中や木材内部で生活しているため、爬虫類が捕食できるのは主に地表に出てきた個体や羽アリに限られます。
鳥類:スズメやツバメの捕食パターン
鳥類もシロアリの重要な天敵として知られています。特にスズメやツバメは、シロアリの羽アリが飛翔する時期に活発な捕食活動を行います。鳥は優れた飛行能力と視力を持ち、空中を飛ぶ羽アリを効率的に捕らえることができるのです。
ツバメは飛翔昆虫を捕食することに長けており、シロアリの群飛が始まると複数のツバメが集まってきて、空中で羽アリを次々と捕食します。スズメは主に地上に降り立った羽アリを捕食し、時には巣に持ち帰って雛の餌としても利用します。シジュウカラやメジロといった小型の鳥類も、木材の隙間や地表付近で活動するシロアリを見つけると捕食します。
こうした鳥類による捕食は、特に春から初夏にかけての羽アリの飛翔期に顕著に見られます。鳥類による捕食も地表や空中に露出したシロアリに限られ、巣全体に影響を与えることは稀です。
天敵がいてもシロアリが生き残る3つの理由
多くの天敵を持つシロアリですが、完全に絶滅することなく何億年もの間、生き残ってきました。その主な理由を3つ取り上げて詳しく解説します。
複雑な構造の巣づくり
シロアリは非常に巧妙な巣づくりを行うことで、天敵から身を守っています。巣は複雑な迷路のような構造をしており、外敵が侵入しにくい設計になっています。通路は蛇行し、所々に行き止まりがあり、天敵が侵入しても簡単には中心部まで到達できない仕組みです。
巣の入り口は必要最小限の大きさに保たれ、兵隊アリが常に見張っています。外敵が近づくと、兵隊アリは大きな顎で通路を塞いで防衛線を築きます。
こうした防衛システムがあるので、クロアリなどの天敵が巣に侵入しても、全滅するような事態を防げるのです。
女王アリの高い繁殖力
シロアリの女王アリは、驚異的な繁殖力を持っています。普通の昆虫と比べても、その産卵能力は桁違いに高く、1日に数千個もの卵を産むことができます。この高い繁殖力により、たとえ天敵に多くの個体を失っても、短期間で個体数を回復することが可能です。
女王アリは巣の中心部で産卵に専念し、働きアリから栄養を受け取りながら、絶え間なく卵を産み続けます。産まれた卵は働きアリによって丁寧に世話され、孵化率も非常に高くなっています。
高度な社会性と集団での防衛システム
シロアリは高度に組織化された社会を形成し、効果的な集団防衛システムを持っています。コロニーには明確な役割分担があり、各個体が協力して天敵から身を守ります。
特に兵隊アリは、大きな顎と硬い頭部を持ち、専門的な防衛能力を備えています。天敵が近づくと、兵隊アリはすぐに防衛態勢を取り、他の個体の避難時間を確保します。また、危険を察知した際には、フェロモンを出して仲間に警戒信号を送ります。
働きアリは巣の補修や通路の封鎖を担当し、被害を受けた部分を速やかに修復します。さらに、シロアリは共食いの習性も持っており、死亡した個体や瀕死の個体を食べることで、栄養を無駄にせず、病気の蔓延も防いでいます。
天敵を使ったシロアリ対策方法
シロアリには多くの天敵が存在しますが、天敵がシロアリを駆除してくれるかというと、そうはなりません。詳しくみていきましょう。
シロアリの天敵に頼る駆除の問題点
天敵を利用したシロアリ駆除をしようと思っても、人間の制御下に置くことが難しく、意図したように動いてくれません。
例えば、天敵として知られるクロアリを人為的に導入しても、家屋内に新たな害虫問題を引き起こす可能性があります。クロアリは人間の食べ物も狙うため、台所や食品庫に侵入して衛生上の問題を引き起こすかもしれません。
さらに重要な点として、シロアリは地中深くや木材内部など、多くの天敵が到達できない場所に生息します。天敵による完全な駆除は困難と言うべきです。
専門家に相談すべきタイミング
シロアリ被害への対処は、早期発見・早期対応が極めて重要です。以下のような状況が見られた場合は、すぐに専門家に相談することをおすすめします。
まず、家の中や周りで羽アリを見つけた場合です。羽アリの発生は新しい巣の形成を意味し、すでに被害が進行している可能性があります。特に春から夏にかけて見られる羽アリは要注意です。
床や壁がたわむ、軋むなどの異常を感じた場合も、速やかに点検が必要です。これらはシロアリ被害の典型的な症状で、放置すると被害が急速に拡大する可能性があります。
よくある質問
Q. 天敵を家に呼び込んで駆除できる?
天敵を利用したシロアリの駆除は実践的ではなく、むしろ新たな問題を引き起こす可能性があります。例えば、クロアリを導入すると、クロアリ自体が家の中に巣を作り、新たな害虫問題となる可能性があります。むしろ、専門家による適切な駆除処理を行う方が、確実で安全な解決方法となります。
Q. シロアリと間違えやすい虫とは?
シロアリと最も間違えやすいのは、クロアリです。シロアリは胴体にくびれがなく、触角がまっすぐで、前の羽と後ろの羽の大きさが同じという特徴があります。一方、クロアリは胴体にはっきりとしたくびれがあり、触角が折れ曲がっており、前の羽が後ろの羽より大きいのが特徴です。
Q. 一般家庭でシロアリの駆除は可能?
一般家庭での自己流のシロアリ駆除は可能ではありますが、専門業者に任せるのと比べると完璧ではないまま対処を終えてしまう恐れがあり、おすすめはできません。
市販の駆除剤では、シロアリの巣の深いところまで効果が届かない可能性が高く、表面的な対処に留まってしまいます。また、不適切な薬剤の使用は、人体や環境に悪影響を及ぼす可能性があります。完璧な対策を求めるのであれば、専門業者に任せる方がいいでしょう。
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