シロアリ調査の重要性と正しい対策方法

シロアリは、建物の木材を食害する害虫として知られていますが、被害が目に見えて現れる頃にはすでに深刻なダメージが進行している場合が少なくありません。
シロアリの被害を最小限に抑えるには、定期的な調査が重要です。
特に木造住宅に住む人や、過去にシロアリ被害を経験したことがある人は、事前に調査を行うことでリスクを軽減できます。
本記事では、シロアリ調査の必要性や具体的な調査方法、業者の選び方などを詳しく解説し、シロアリ対策の第一歩となる情報を紹介します。
なぜシロアリ被害は深刻なのか
シロアリは木材を主な食料とする害虫で、住宅の柱や床下の構造部分に深刻なダメージを与えます。
被害が進行すると建物の強度が著しく低下し、最悪の場合は倒壊の危険性も生じます。
シロアリは暗く湿った環境を好むため、被害が目に見えない場所で進行することが多く、気づいたときには既に深刻な状況になっているケースが少なくありません。
そのため、定期的なシロアリ調査が重要となります。
シロアリ調査とは
シロアリ調査とは、住宅や建築物内にシロアリが生息しているかどうかを確認し、被害状況を正確に把握するための検査のことを指します。
調査を行うことで、シロアリが侵入しているかどうかを早期に発見し、適切な対策を講じることが可能になります。
シロアリは見た目には分かりにくい場所に巣を作るため、専門的な知識と技術を持つプロによる調査が推奨されます。
シロアリ調査の具体的な方法
シロアリ調査には、いくつかの方法が存在します。
建物の状況や環境に応じて目視調査を始め、赤外線カメラや音響センサー、ファイバースコープといったの最新技術を活用する場合もあります。
これらの活用によって、シロアリの被害を迅速かつ正確に調査ができ、被害が進行する前に建物を守ることが可能です。
では、具体的にどのように対応を行っているのかを説明します。
目視調査 – シロアリ被害の早期発見に有効な方法
シロアリ調査の基本となるのが目視による点検です。
専門的な機器を使用せずに、建物の外壁や基礎部分、床下、天井裏などを直接確認してシロアリの存在を把握する方法です。
特にシロアリが侵入しやすい場所や、被害が出やすい箇所を重点的に調べることで、早期発見につながります。
目視調査では、シロアリが活動している兆候を見つけるのがポイントです。
例えば、シロアリは移動する際に「蟻道(ぎどう)」と呼ばれるトンネル状の通路を作ります。
この蟻道は地面から建物へとつながっている場合が多く、基礎部分や壁の表面に現れることがあります。
こうした蟻道を見つけた場合は、すでにシロアリが侵入している可能性が高いため、すぐに対策が必要です。
また、木材を叩いた際の音の違いも重要なチェックポイントです。
正常な木材はしっかりとした音がしますが、シロアリによって内部が食害されている場合は、空洞ができているため軽い音がします。
特に床下や柱など、普段目にしない場所の木材がスカスカになっていると、建物全体の強度にも影響を与える恐れがあります。
ほかにも、シロアリが排出するフンや木くずの有無も重要な指標です。
シロアリは木材をかじるため、その周囲に木くずのようなものが落ちている時があります。
これらの痕跡が確認できる場合は、シロアリがすでに棲み着いている可能性が高いです。
そして春から夏にかけての羽アリの大量発生も、シロアリ被害のサインとなります。
羽アリはシロアリの繁殖活動の一環で、発見すると近くに巣がある可能性が高いため、放置せずに早めの対処が大切です。
目視調査は比較的簡単に行える方法ですが、建物の内部まで詳しく確認するのは難しいため、被害の進行状況を正確に把握するには他の調査方法との組み合わせが推奨されます。
打診調査 – 木材の内部状況を確認する手法
打診調査は、専用の器具を用いて木材を軽く叩き、その音の違いから内部の状態を調べる方法です。
この調査は、目視では確認しにくい内部の食害を発見するのに役立ちます。
シロアリに食害されていない正常な木材は、叩くと「コンコン」と硬い音がします。
しかし、シロアリの被害に遭った木材の音は、空洞化しているため「ポコポコ」といった軽い音や鈍い音です。
特に壁の内側や柱の内部は目視で確認できないため、こうした音の違いを利用して異常を見つけていきます。
打診調査はシロアリだけでなく、木材の腐朽や水漏れの影響による劣化を見つけることも可能です。
床下や天井裏の木材に異常があると、家の耐久性が大きく損なわれるため、早めに対策を講じましょう。
機器を使用した調査 – 高精度でシロアリの被害を把握
シロアリの被害をより正確に把握するために、近年では専用の機器を使用した調査が行われます。
これにより、目視や打診調査では発見が難しい内部の被害も特定できます。
赤外線カメラによる温度変化の分析
シロアリの巣や活動を特定するために、赤外線カメラを活用する方法が注目されています。シロアリが生息する場所では、周囲と比較して温度が異なるため、赤外線カメラの使用でその温度差を視覚的に捉えられるからです。
例えば、壁の内部にシロアリのコロニーが形成されると、その部分の温度が周囲より高くなります。
赤外線画像を解析すると、目に見えない被害箇所を特定できるため、適切な駆除方法を検討する上で大いに役立ちます。
特に木造住宅や集合住宅では、壁の内部を直接確認するのが難しいため、非破壊で調査できる赤外線カメラは非常に有効なツールのひとつです。
音響センサーを用いた食害音の検出
シロアリは、木材を食害する際に微細な音を発します。
この音を検出するのが、音響センサーの役割です。
通常、人間の耳では聞き取れないほどの小さな音ですが、音響センサーを用いるとシロアリの活動状況を把握できます。
例えば、シロアリが木材をかじる際「カリカリ」といった音が発生しますが、これを特殊なセンサーで拾い上げて解析すると、どの部分でシロアリが活動しているのかを突き止められます。
特に、床下や壁内部など目視できない場所でのシロアリ調査に適しており、建物の被害が広がる前に早期発見ができる点が大きなメリットです。
ファイバースコープによる内部確認
シロアリ被害を直接目で確認するために、ファイバースコープが利用される場合もあります。
ファイバースコープとは、細い管状のカメラを用いて狭い空間を観察する装置のことです。
壁や床に小さな穴を開け、そこからファイバースコープを挿入すると、建物内部の状況をリアルタイムで確認できます。
この方法を活用すればシロアリがどこに潜んでいるのかを視覚的に捉えられ、被害の範囲や巣の位置を、より正確に把握できます。
また、シロアリの種類も特定できるため、適切な駆除対策のための重要な情報を得ることが可能です。
シロアリ調査を依頼すべきタイミング
シロアリは目に見えない場所で静かに侵食を進めるため、被害に気づいたときにはすでに深刻な状況になっている場合が多いです。
そのため、被害が発生する前の早めの調査が重要になります。
では、具体的にどのタイミングで調査を依頼すればよいのでしょう。
シロアリ調査を行うべき時期にはいくつかの目安があるので、適切なタイミングで点検を実施すると、深刻な被害を未然に防げます。
ここでは、特に注意すべきタイミングについて詳しく説明します。
新築から5年以内でも油断は禁物
新築の住宅であっても、シロアリの被害を完全に防げるわけではありません。
一般的に、新築時には防蟻処理が施されるものの、その効果は永久ではなく、時間の経過とともに薄れていきます。
特に、薬剤処理による防蟻対策は5年ほどで効果が弱まるとされ、早い場合は数年で効果がなくなる場合もあります。
そのため、新築から5年以内であっても、定期的に調査を依頼して建物の状態をチェックすることが大切です。
新築住宅でも、地盤の状態や周囲の環境によってはシロアリの侵入リスクが高まる場合があります。
例えば、もともと湿気が多い土地に建てられた家や、周囲に古い建物が多い地域では、シロアリが発生しやすい傾向があります。
さらに庭や敷地内に木材を保管している場合や基礎部分に隙間がある場合は、シロアリが侵入しやすい環境となるため、新築でも早めの調査が必要です。
築10年以上の住宅は要注意
築年数が10年以上経過した住宅は、シロアリの被害を受けやすい時期に差し掛かっています。
これは、建材の経年劣化により木材がもろくなり、シロアリにとって食害しやすい状態になっているためです。
もともと防蟻処理がされていなかった住宅や、過去に一度もシロアリ対策をしていない住宅では、すでに被害が発生している可能性もあります。
また築10年を超えると、床下や壁の内部など、見えない部分で湿気が溜まりやすいです。
シロアリは湿気が大好物で、木材が湿っていると食害が進みやすくなります。
築10年を迎えた住宅では、シロアリ調査を定期的に行い、被害が広がる前に適切な対策をとることが大切です。
羽アリを見かけたらすぐに調査を依頼
春から夏にかけて、家の中や庭で羽アリを見かけた場合は、シロアリがすでに建物の近くや内部に巣を作っている可能性があります。
羽アリは、シロアリの成虫が新しい巣を作るために飛び立つ際に見られるので、放置すると建物内に繁殖して被害が拡大する恐れがあります。
特に、夜間に照明の周りに集まる羽アリを見かけたり、窓際や玄関付近に羽が大量に落ちていたりする場合は、シロアリの巣が近くにある可能性が高いため、すぐに専門業者へ調査を依頼するべきです。
羽アリは見た目が黒アリの羽アリと似ていますが、シロアリの羽アリは翅の大きさが前後同じで、胴体がくびれていないという特徴があります。
間違えて放置してしまうと、知らぬ間に被害が拡大するため、見分け方をあらかじめ知っておくことも大切です。
過去にシロアリ被害があった家は定期調査が必須
一度でもシロアリ被害を受けた住宅は、再び被害に遭うリスクが非常に高くなります。
シロアリは一度駆除しても、完全にいなくなるとは限らず、同じ場所に再侵入するケースが多いためです。
以前の被害が大規模であった場合や、建物の構造的にシロアリが侵入しやすい条件がそろっている場合は、定期的な調査が欠かせません。
また、シロアリの被害を受けた木材は内部がもろくなっているため、新たに侵入したシロアリによって簡単に再び食害されてしまいます。
過去にシロアリ被害の経験がある場合は、定期的に専門業者に点検を依頼し、必要に応じて再処理や追加対策が推奨されます。
湿気が多い地域や家の構造にも注意
シロアリは湿った環境を好むため、湿気が多い地域や住宅の構造によっては、被害が発生しやすくなります。
例えば、川や池の近くに建っている住宅や地下水位が高いエリアでは、常に湿気が多くなりがちでシロアリが生息しやすい環境です。
床下の換気が不十分な住宅や通気性の悪い構造をしている建物も、湿気がこもりやすく、シロアリのリスクが高まります。
さらに、ウッドデッキや庭の木材製品や植木鉢の下など、シロアリが寄り付きやすい物が周囲にある場合は特に注意が必要です。
特に古くなった木材や腐食した部分が放置されていると、そこにシロアリが棲みつき、やがて家屋へ侵入する危険性があります。
住宅の構造や周囲の環境を考慮し、シロアリの発生しやすい条件が整っている場合は、早めに専門業者の調査を依頼しましょう。
シロアリ調査後の対策
調査の結果、シロアリの存在が確認された場合は、速やかに駆除対策を実施する必要があります。
シロアリを放置すると、建物の木材が食害されて構造的なダメージを受ける可能性があるため、早期の適切な処置が重要です。
スプレータイプの薬剤
スプレータイプの薬剤は即効性があり、シロアリの通り道や侵入経路に直接噴射することで効果を発揮します。
床下の木材や基礎部分の隙間、シロアリが移動する経路などに使用すると効果的です。
ただし、持続効果が短いため、一度の使用で完全な駆除は難しく、定期的な散布が必要となります。
液体タイプの薬剤
液体タイプの薬剤は、木材の表面に塗布することで防蟻効果を持続させます。
床下や壁内部の木材にしっかりと浸透させることで、長期間シロアリを寄せ付けない効果が期待できます。
また床下の土壌に散布すると、シロアリが侵入しにくい環境を作ることもできます。
ベイト剤(毒餌)
ベイト剤(毒餌)は、シロアリの巣全体の駆除に適した方法です。
シロアリが餌を食べ、それを巣に持ち帰ると仲間ごと根絶できる仕組みになっています。
建物の周囲や床下にベイトステーションを設置し、シロアリが自然に毒餌を摂取するように誘導すると巣ごと駆除できることから、長期的な防除対策として有効です。
バリア工法
バリア工法は、薬剤を建物の周囲や基礎部分に注入し、シロアリが侵入できない防護層を作る方法です。
基礎のコンクリート部分や木材の接触部分に重点的に施工すると、シロアリの侵入を防げます。
また薬剤の効果が持続するため、一度の施工で長期間の予防効果が期待できます。
物理的対策
シロアリの侵入を防ぐためには、物理的な対策も重要です。
例えば、通気性を確保するために床下換気口を設置したり、木材と地面の接触を避けるために基礎部分を高くしたりすることが挙げられます。
また、シロアリの侵入経路となる隙間をシーリング材で塞ぐ方法も有効です。
まとめ
シロアリは住宅に深刻な被害をもたらす害虫で、被害が進行すると建物の耐久性を著しく低下させてしまいます。
そのため、シロアリ被害を防ぐためには、早期発見と適切な対策が不可欠です。
築年数が経過した住宅や湿気が多い環境では、シロアリが発生しやすいため、定期的な調査が重要になります。
シロアリ調査には目視調査や打診調査、機器を使用した精密な調査方法があり、それぞれの方法を組み合わせて被害の有無や範囲を正確に特定できます。
調査の結果、シロアリが発見された場合は、スプレータイプの薬剤や液体薬剤、ベイト剤などの駆除方法を適切に選択し、速やかな対応が必要です。
被害を未然に防ぐには、建物の通気性を確保し、シロアリが侵入しにくい環境を整えましょう。
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