礎断熱のシロアリ対策を解説!新築時から建築後に自分でできる予防策を紹介

家を建てるときにシロアリ対策は欠かせず、基礎断熱の住宅も例外ではありません。
シロアリ対策を怠ってしまえば床下や柱が食害に遭い、耐震性が悪くなり倒壊リスクが高まります。
またリフォーム費用や駆除費用も発生するため、コストの面からも、シロアリ対策は必須です。
そこで本記事では、基礎断熱のシロアリ対策について解説します。
新築時から建築後に自分でできる予防策を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
基礎断熱の住宅とシロアリの関係
はじめに基礎断熱の住宅とシロアリの関係について、以下2点を解説します。
- 基礎断熱とは基礎を断熱材で覆う施工法
- 基礎断熱の住宅におけるシロアリの侵入リスク
順番に見ていきましょう。
基礎断熱とは基礎を断熱材で覆う施工法
基礎を断熱材で覆う施工法を基礎断熱といい、床下も室内と捉えて同じ温度に保ちます。
そのため基礎断熱の住宅では高気密・高断熱となり、夏は涼しく冬は暖かく過ごせます。
断熱工法には床の直下へ断熱材を施工する床断熱もありますが、基礎断熱と違い床下は野外と同じ空間です。
床断熱では室内の温度が外気温の影響を受けやすく、断熱材の性能が過ごしやすさに大きくかかわる傾向にあり、近年では基礎断熱の住宅が増えてきました。
また基礎断熱は床下に施工する断熱材の場所の違いにより、基礎内断熱と基礎外断熱の2種類に分けられます。
基礎内断熱と基礎外断熱を比較したとき、断熱性能は基礎外断熱のほうが有利です。
なぜなら基礎外断熱は、基礎部分の外側から建物まで丸ごと断熱材で包む工法のため、断熱性が高くなるからです。
ただし、住宅を建てるときはどのような断熱工法においても、シロアリ被害への対策が欠かせません。
シロアリは木材のセルロースを栄養源としますが、雑食なのでプラスチックやゴム類など、あらゆるものを食べます。
断熱材も例外ではなく、柔らかく適度な温度があるためシロアリが好んで食害し、住宅の木材にまで被害が及ぶのです。
また基礎断熱の住宅にする場合は、基礎内断熱と基礎外断熱どちらの施工法にするかによって、シロアリ被害へのリスクの高さが異なります。
次の章では基礎断熱の住宅における、シロアリの侵入リスクについて詳しく解説します。
基礎断熱の住宅におけるシロアリの侵入リスク
基礎断熱の住宅において、基礎内断熱と基礎外断熱どちらの断熱工法を用いても、シロアリの侵入リスクはあります。
ただし、基礎内断熱と比較して、外に断熱材のある基礎外断熱のほうがシロアリの侵入リスクは高くなるので知っておきましょう。
基礎外断熱の場合、断熱材が地中に埋まっている状態となり、食べながらシロアリが侵入して建物の木材へ被害を与えます。
基礎外断熱の断熱材は建物の外装材によって覆われている状態のため、シロアリの侵入に気づきにくく、発見したときには被害が進んでるケースが多いです。
一方、基礎内断熱のシロアリの侵入経路は、基礎のコンクリート部分にできたわずかな隙間です。
ひび割れや基礎の継ぎ目部分などを通じて侵入したのち、内側の断熱材を介して建物に使われている木材や床材などを食害します。
そのため、基礎断熱の施工法にかかわらずシロアリ被害のリスクはありますが、断熱材が地面に接していない基礎内断熱のほうが侵入しにくく、被害に遭いにくい傾向にあります。
基礎断熱を新築するときのシロアリ対策
ここまで紹介したとおり、基礎断熱の住宅を新築するにあたって、シロアリ被害のリスクは避けては通れません。
次は、基礎断熱を新築するときのシロアリ対策について解説します。
- シロアリに強い断熱材を選ぶ
- 防蟻処理をする
- ベタ基礎にする
- 床下の風通しを重視し点検しやすい作りにする
各項目について、順番に見ていきましょう。
シロアリに強い断熱材を選ぶ
シロアリ被害をできるだけ防ぐには、シロアリに強い断熱材を選びましょう。
完全にシロアリ被害を防げるとは限りませんが、被害に遭うリスクを低減できます。
以下に一般的な住宅によく使用される断熱材の種類と、シロアリへの耐性や理由をまとめたので、参考にしてください。
断熱材の種類 | 断熱材の素材 | シロアリへの耐性 | 耐性の理由 |
---|---|---|---|
無繊維系断熱材 | グラスウールロックウール | 強い | 素材が無機質でシロアリが好まない |
木質繊維系断熱材 | セルロースファイバー | 強い | ホウ酸を含む |
インシュレーションボード | 弱い | ホウ酸を含まない | |
天然素材系断熱材 | ウールブレス | 強い | ホウ酸による防虫加工がしてある |
炭化コルク | 強い | スベリンによる虫除け効果がある | |
発泡プラスチック系断熱材 | フェノールフォームポリスチレンフォーム硬質ウレタンフォーム | 弱い | 素材がプラスチックで食害される |
シロアリが好まない素材でできている無繊維系断熱材や、シロアリ駆除に使われるホウ酸で処理されている断熱材はシロアリへの耐性が強く、被害に遭いにくいです。
また天然素材系断熱材の炭化コルクには、天然の防虫成分スベリンによるシロアリ抑制効果を期待できます。
一方、プラスチックを発泡させた発泡プラスチック系断熱材は、プラスチックを食べるシロアリの食害に遭いやすく、耐性がありません。
また木質繊維系断熱材のうち、「自然に優しい断熱材」といわれるインシュレーションボードにはホウ酸が入っていないため、耐性は劣ります。
選び方によってシロアリ被害に遭うリスクは大きく変わるので、断熱性能だけでなくどのような素材でできているかも考慮して、断熱材を決めましょう。
防蟻処理をする
シロアリ被害のリスクを低減させるには、防蟻処理をおこなってください。
防蟻処理とは住宅の土台や柱などに専用の薬剤を散歩や塗布するシロアリ対策で、防蟻対策とも呼ばれます。
木造の建物には建築基準法施行令において、地面から1メートル以内の箇所へ防蟻処理が義務づけられており、高い有効性があります。
(出典:e-Gov法令検索「建築基準法施行令 第四十九条」)
ただし、防蟻処理は適切な方法でおこなわなければ効果はなく、せっかく費用や手間をかけても被害に遭いかねません。
以下のように基礎工事の着工前に土壌へ薬剤を散布して、断熱材への侵入を食い止める必要があります。
シロアリは地中から建物内に侵入するため、薬剤の散布によって防蟻層を作ると阻止できます。
着工後に床下のコンクリート部分に薬剤を散布しても、シロアリは断熱材の中やコンクリートの隙間を侵入してくるので効果はありません。
防蟻処理は、いつ、どこに薬剤を散布するのかが非常に重要です。
効果的なシロアリ対策のためにも、正しい方法で防蟻処理をおこなったうえで、基礎工事を開始しましょう。
ベタ基礎にする
ベタ基礎にすると、隙間ができにくいためシロアリの侵入を防ぎやすくなります。
基礎の構造には、布基礎とベタ基礎があります。
ベタ基礎は、立ち上がっている部分と床一面となる基礎コンクリート全体を鉄筋コンクリートで一体化して、建物を面で支える構造です。
分厚いコンクリートで地面すべてを覆うベタ基礎は、シロアリが通れるような隙間ができにくく、建物と地面も接しないため、シロアリ被害に遭いにくい特徴があります。
また、分厚いコンクリートによって建物に湿気が伝わりにくい点も、湿度を好むシロアリの予防につながります。
一方、布基礎は逆T字形状の基礎を配置させ、線で建物を支える構造です。
布基礎の地面は土壌や防湿シート、防湿コンクリートのいずれかで施工し、基礎とは一体化していません。
それゆえ、布基礎はコンクリートとの間に隙間ができ、シロアリが侵入しやすくなります。
もちろん、ベタ基礎にしてもひび割れによる隙間や、蟻道を作って侵入するケースもあります。
蟻道 | シロアリが家の中を移動するために作るトンネル状の通路 |
---|
しかし、布基礎よりもシロアリ被害に遭うリスクは低くなるため、基礎断熱の住宅にするときはベタ基礎を選択しましょう。
床下の風通しを重視し点検しやすい作りにする
シロアリは湿度を好むので、床下の風通しの良さを重視し、なおかつ点検しやすい作りにすると被害を防ぎやすくなります。
床下に換気口や換気扇を設置すると、湿度が溜まりにくくなります。
床下の換気扇は1台1万円弱くらいが一般的で、取り付け費用は10~30万円が目安です。
業者によって費用は異なるので、見積もりを複数取って比較するといいでしょう。
また床下点検口を複数作ると、点検がしやすくなります。
1階の対角にあると便利なので、1箇所ではなく2箇所以上の点検口を設置して、シロアリ被害に遭っていないか定期的に確認できる作りが理想です。
シロアリの侵入経路の多くは床下のため、風通しの良さや点検口の整備で対策をして、被害を予防しましょう。
【自分でできる】基礎断熱のシロアリ被害予防策
新築時に取り入れたいシロアリ対策について理解できたところで、次は日頃から自分でできる予防策を解説します。
基礎断熱の住宅において自分でできるシロアリ被害予防策は、以下の3つです。
- シロアリの餌になるものを放置しない
- 水漏れや雨漏りがないか点検・早期に対処する
- 定期点検をする
すでに基礎断熱の住宅を建ててしまった人も、これから新築の着工に入る人も一緒に見ていきましょう。
シロアリの餌になるものを放置しない
シロアリの餌となるものが野外にあれば呼び寄せてしまうため、放置しないでください。
一般的にシロアリが餌とするのは木材ですが、実際には成分として含まれるセルロースを餌にします。
セルロースは以下のようなものに含まれているので、野外へ放置せずに建物の中に片付けましょう。
- ダンボール
- 新聞紙
- 本
- 畳
- 衣類
- 木材
ただし、発泡スチロールやプラスチック、ゴムなどの人工物までシロアリは食べるため、野外へ何かしらものを放置する行為事態を控えたほうが賢明です。
自宅周囲に不要なものを置かない意識が、シロアリ予防には欠かせません。
水漏れや雨漏りがないか点検・早期に対処する
シロアリは湿度を好むので、水漏れや雨漏りがないか点検し、見つかったときは早期に対処してシロアリの住みやすい環境を作らないようにしましょう。
建物や水道管は年月が経つと劣化し、水漏れや雨漏りの原因となります。
また新築でも配管の接合部に隙間があるといった不具合があれば水漏れにつながるため、注意が必要です。
外壁のシーリングや塗装のはがれがあれば雨漏りの原因になるので、定期的に屋根や外壁の点検や補修をおこない、水道代が急騰するようなことがあれば水漏れの可能性を疑ってください。
定期点検をする
シロアリが侵入していないか、定期的に点検しましょう。
定期点検では、以下のような点に着目して1年に1回を目安に家の周囲を見てください。
- 屋根裏や床下にシロアリはいないか
- 4月~7月にかけて家の玄関やベランダなどに羽アリはいないか
- 家の周囲や木材に不自然な土の道がないか
- 木材が腐ったり細くなっていないか
まず、シロアリがいないか、屋根裏や床下を目視で確認します。
シロアリは湿度があり、光を避けられる場所を好むので、屋根裏や床下は住みやすい環境です。
羽アリが飛び立つ4月~7月にかけて羽アリを見かけた場合も、侵入されていないか疑ってください。
また家の周囲や木材に不自然な土の道があれば蟻道の可能性があり、建物への侵入を疑う必要があります。
【蟻道】
被害に遭っていれば玄関や建具などの木材がスカスカになっているほか、床がきしみ木材の強度が低くなっているので、注意深く観察してください。
定期点検をきちんとおこない、被害を最小限に抑えましょう。
基礎断熱でシロアリ予防を考えるならプロの目も重要
基礎断熱の住宅にするとき、プロの目を借りると効果的なシロアリ予防効果を期待できます。
シロアリを予防するには定期点検が必要不可欠ですが、知識のない人がチェックしても見落としてしまう可能性を否定できません。
プロのシロアリ駆除業者にはノウハウがあり、どのような場所が被害に遭いやすいかを把握しています。
素人が見て判断が付かない場所でも、プロならシロアリ被害に遭っているか否かを見分けられ、シロアリの発生を見落とすリスクが減ります。
効果的なシロアリ予防を考えるなら、プロの力を頼ることもひとつの策として知っておきましょう。
シロアリ点検を無料でおこなっている業者も多く、もし発見した場合はその場で見積もりを出してもらえます。
シロアリ駆除を依頼するときは3~4社から見積もりを出し、値段やサービスを比較しながら検討すると、より良い業者選びができます。
まとめ
基礎断熱の住宅では、基礎内断熱と基礎外断熱、どちらで施工するにせよシロアリ対策は必須です。
シロアリ被害への大きさを考慮すると基礎内断熱がおすすめで、施工段階でベタ基礎の選択や防蟻処理などの対策もしっかり実施してください。
基礎断熱の住宅を建てたあとも、日頃から自分でできる対策を講じなければ、結局はシロアリを呼び寄せてしまうことになります。
プロの力も借りながら、大切な自宅をシロアリから守りましょう。
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