ヤマトシロアリの駆除方法を解説!自分で駆除する方法と業者へ依頼すべきシーンを解説

ヤマトシロアリは日本に幅広く生息しており、シロアリ被害の大半におよびます。
自宅でヤマトシロアリを見かけたときは、どう駆除すべきか多くの人が悩むでしょう。
そこで、本記事ではヤマトシロアリの見分け方から自分で駆除する方法、業者へ依頼すべきシーンまで解説します。
ヤマトシロアリの被害を放置した場合に起こりうる影響にも触れているので、参考にしてください。
ヤマトシロアリを駆除するにはまず特徴を見分ける
ヤマトシロアリを駆除するにあたって、ほかの種類ではないか特徴を見分けましょう。
日本には現在、22種類のシロアリが生息しています。(出典:公益社団法人「日本しろあり対策協会」)
すべてのシロアリが住宅へ加害するわけではなく、大半は自然界における森の分解者として枯れた木材や落ち葉などを食べて、土に還す役割を担っています。
住宅に被害を与えるシロアリはヤマトシロアリを含む以下の4種とされており、不必要な駆除を避けるためにも見分けたうえで対処が必要です。
シロアリの生活圏 | 種類 |
---|---|
土壌生活種:地面の中で活動 | ・ヤマトシロアリ ・イエシロアリ |
木材生活種:樹木に生息 | ・アメリカカンザイシロアリ ・ダイコクシロアリ |
国土交通省補助事業の「シロアリ被害実態調査報告書」によると、日本の住宅におけるシロアリ被害は92%がヤマトシロアリによるもので、次いでイエシロアリが約7.7%でした。
そこで、ここからはヤマトシロアリの特徴とともに、次に被害の多いイエシロアリとの違いを合わせて見ていきます。
ヤマトシロアリ | イエシロアリ | |
---|---|---|
分布 | 日本全国 (北海道北部を除く) | ・神奈川県以西の 海岸線に沿った温暖な地域 ・千葉県の一部 ・南西諸島 ・小笠原諸島 |
巣を作る場所 | 湿った木材の中 | 建物や地中 |
羽アリ | ![]() 出典:さいたま市 健康科学研究センター サイズ:約7.5mm 頭部:黒色 羽の色:黒色 | ![]() 出典:東京文化財研究所 サイズ:約14mm 頭部:茶色 羽の色:黄色っぽい茶色 |
羽アリの出現時期 | 4月~5月の午前中 | 6月~7月の夕~夜 |
兵隊アリ | ![]() 出典:東京文化財研究所 頭部が四角形 | ![]() 出典:東京文化財研究所 頭部が卵形 |
ヤマトシロアリは全国に分布しており、生息していない地域を探すのが難しいほどなので、結果的に被害発生率も高くなります。
社会性昆虫としてヤマトシロアリは以下のような集団生活を送っており、それぞれに役割分担があります。
図にあるヤマトシロアリのうち、見分けるときに役に立つのが羽アリと兵隊アリです。
普段は湿った木材の中にいるヤマトシロアリですが、羽アリはつがいを作るために4月~5月ごろの午前中に飛び立つので、目にする機会があります。
7.5mm程度の全体的に黒っぽい色をしている羽アリがいたら、ヤマトシロアリを疑いましょう。
また、普段地中にいる兵隊アリの頭部は四角形と特徴的なので、合わせて把握しておいてください。
一方、イエシロアリもヤマトシロアリと同様に集団生活を送っていますが、生息地が限定的なため、シロアリ被害は少ない傾向です。
イエシロアリも、羽アリや兵隊アリに特徴があり、羽アリは黄みを帯びた羽で体は黒色です。
6月~7月の夕~夜にかけて飛び立つので、ヤマトシロアリの羽アリと時期は重なりません。
兵隊アリの頭部は卵形なので、ヤマトシロアリもしくはイエシロアリのどちらなのか迷ったときはすぐに見分けられるでしょう。
日本での被害はヤマトシロアリが多いものの、イエシロアリの可能性も少なからずあります。
2種類の特徴を把握しておき、シロアリの疑いがあるときは見分けられるようにしておくと安心です。
ヤマトシロアリを自分で駆除するときの方法2種類
発見したシロアリがヤマトシロアリであるなら、放置せずに早急に駆除しなければなりません。
ヤマトシロアリを自分で駆除するときの方法は、以下の2種類です。
- 【一般的】防除するバリア工法
- 【状況に応じて】巣を根絶するベイト工法
順番に見ていきましょう。
【一般的】防除するバリア工法
ヤマトシロアリの駆除で一般的な方法は、予防と駆除を同時におこなうバリア工法です。
ここからはバリア工法の概要と、自分でおこなう方法を解説します。
バリア工法の概要
バリア工法とは、以下のような場所へ薬剤の散布や注入をして、ヤマトシロアリの侵入経路を塞ぐバリア層を作る工法をいいます。
- 家屋の木部
- 壁部
- 床下の土壌
ヤマトシロアリの多くは床下を経由して侵入してくるため、バリア工法をおこなううえで、とくに重要なのが床下全面への薬剤処理です。
土壌面はもちろん、基礎立ち上がり箇所や束柱などを隙間なくすべて処理して、ヤマトシロアリの侵入経路を断ちます。
また被害が生じている箇所にはドリルを使用して木材や床下などに穴を開け、浸透性の高い薬剤の注入によって、見えないところにいるヤマトシロアリを駆除します。
未処理の箇所を少しでも作ればヤマトシロアリは再び侵入するため、バリア工法では徹底した処理が重要です。
床下に潜ってチェックできない箇所があれば、点検口を作ることもあります。
ただし家屋に直接薬剤を処理するバリア工法は、即効性や再発予防の効果が高い一方で、化学物質への抵抗力の弱い人がいる場合には向きません。
状況に応じて、後ほど紹介する「ベイト工法」を選択肢に入れましょう。
バリア工法を自分でする手順
バリア工法を自分でする手順は、以下のとおりです。
【用意するもの】
- 噴霧器やホース、タンク(100Lくらい)
- 養生用品(シートやテープ、はさみ)
- 保護具(つなぎやマスク、ゴム手袋、保護メガネ)
- 土壌処理用薬剤(例:白アリスーパー土壌用SC50)
- 木部処理用薬剤(例:水性白アリスーパーPHI・20WE)
【バリア工法の手順】
手順 | 詳細 |
---|---|
1. 準備 | 薬剤の希釈や保護具の着用、点検口付近を養生する |
2. 木部処理 | 木部処理用薬剤を束柱や土台などの木材へ散布する |
3. 土壌処理 | 土壌処理用薬剤を床下の地面全体や基礎、配管、束柱などへ散布する |
4. 片付け | 養生の撤去やタンク・噴霧器を清掃する |
ヤマトシロアリをバリア工法で駆除するには、まず作業前日までに必要なものを準備します。
当日は準備を済ませたら、木部処理用薬剤を用いて木部処理から開始してください。
土壌処理から開始すると薬剤を散布した場所を通れず、木部処理を進められなくなるので注意しましょう。
食害を受けたところや束柱、土台などへ、木材の色が変わるまで薬剤を注入・散布してください。
木部処理を終えたら土壌処理用薬剤を、床下の地面全体や基礎などに散布していきます。
このとき、奥から手前へ散布して、薬剤をまいたところを踏まないように施工しましょう。
すべて薬剤処理できたら、片付けをしてバリア工法によるヤマトシロアリの駆除は終了です。
【状況に応じて】巣を根絶するベイト工法
体調面に不安がある場合や床下に潜りたくない場合は、ベイト工法によるヤマトシロアリの駆除方法が適しています。
ベイト工法の概要と自分で施工する手順を解説するので、一緒に見ていきましょう。
ベイト工法の概要
ベイト工法は巣の根絶を狙う工法で、ヤマトシロアリが好んで食べるベイト剤という毒餌を専用容器に入れて住宅の外周へ埋め込みます。
ヤマトシロアリがベイト剤を巣に持ち帰りほかのシロアリたちと食べると、結果的に巣ごと駆除できる仕組みです。
ゴキブリのホウ酸団子や蟻の巣コロリをイメージすると、わかりやすいでしょう。
バリア工法よりもベイト工法のほうが即効性はないものの、建物に直接薬剤を散布しないので、化学物質への抵抗力の弱い人でも安心してヤマトシロアリを駆除できます。
ベイト工法を自分でする手順
ベイト工法を自分でする手順は、以下のとおりです。
【用意するもの】
- スコップ
- 軍手
- ベイト剤
【ベイト工法の手順】
手順 | 詳細 |
---|---|
1. 準備 | ベイト剤を購入する |
2. ベイト剤の施工 | シロアリが発生しやすい箇所に薬剤を埋める |
ベイト剤はインターネットやホームセンターで販売しているので、作業までに購入しておきましょう。
駆除当日はヤマトシロアリが発生しやすい以下の箇所を中心に、建物外周へベイト剤を設置します。
- 庭の花壇や樹木
- 水回りの近く(トイレやキッチン、お風呂)
- 玄関
直径10cm未満、深さ20cm位を目安に地面へ穴を開けて、ベイト剤を埋め込んでください。
ただし、自分でベイト剤を設置できるのは建物周辺が土の場合のみです。
建物周辺がコンクリートの場合は、穴を開けてベイト剤を設置する必要があるため、業者への依頼が望ましいと考えてください。
ヤマトシロアリの駆除は業者へ依頼したほうが効果的かつ安全
ヤマトシロアリを自分で駆除する方法を解説しましたが、現実的には業者へ依頼したほうが、効果的かつ安全です。
ヤマトシロアリの駆除を業者に依頼するにあたり、以下の3つについて解説します。
- 業者へ依頼すべきシーン
- 業者へ依頼するときのポイント
- 業者へ依頼するときの費用
順番に見ていきましょう。
業者へ依頼すべきシーン
基本的にはどのようなケースでも業者への依頼が最善ですが、とくに以下のシーンでは、自分で対処せずに早めにプロへ依頼しましょう。
業者へ依頼すべきシーン |
---|
・自分ではヤマトシロアリなのか判断が付かない ・自分で駆除する自信がない ・自分で駆除する時間がない ・自分で駆除したが被害が収まらなかった ・自宅の被害が大きすぎる ・徹底的にヤマトシロアリを駆除したい |
自分で駆除する自信がない人はもちろん、時間や手間をかけられない人は、業者へ依頼して対処してもらった方が安全かつスムーズです。
また自分でヤマトシロアリを駆除してみたものの被害が収まらなかったり、被害が大きすぎたりする場合は、もはや素人の手には負えない状況です。
業者なら長年培ってきた知識や技術といったノウハウをもとに、確かな方法を選択して駆除してくれるので、無理せず依頼することが適切な判断といえます。
徹底的にヤマトシロアリを駆除して自宅を安全に過ごせる環境にするのであれば、業者へ依頼しましょう。
業者へ依頼するときのポイント
闇雲に依頼すると悪徳業者や腕がない業者に依頼してしまう可能性があるので、以下の5つのポイントを押さえてください。
複数社から見積もりを取る | 比較しながら相場やサービスを把握する |
費用が明確である | 見積もり内容が細かく、施工後の料金変更がない |
アフターフォローが充実している | 作業後の再発へ対処してもらえるか期間も合わせて確認する |
実績が豊富である | 駆除してきた数や実際のレポートで信用性を判断する |
資格を保有している | 「しろあり防除施工士」を持っている |
シロアリの駆除業者は1社だけでは比較ができないため、最低でも3~4社から見積もりを取りましょう。
多くのシロアリ業者では点検を無料でおこなってくれ、見積もりもその場で出してもらえます。
複数社から見積もりを出してもらえば、自分の住宅のヤマトシロアリの駆除にいくらかかるのか相場を把握でき、サービス内容や費用を比較しながら業者を決められます。
このとき、とくに費用を明確に記載している業者か、チェックしてください。
「ヤマトシロアリ駆除見積もり 〇〇円」とだけ書かれているようであればどのようなサービスでいくらなのかわからず、あとで追加で料金を請求される恐れもあります。
一つひとつのサービスにいくらかかるのか、明確に記載されている業者を選んでください。
また確かな腕があるか判断するにあたって、実績の多さや「しろあり防除施工士」という資格保有者であるかが挙げられます。
「しろあり防除施工士」とは、日本しろあり対策協会が認定している、シロアリの防除施工をおこなう技術者への資格です。
シロアリ駆除には、必ずしも資格は必須ではありません。
しかし、無資格者と違い、講習を受けて必要な実務経験年数を積んでいる有資格者なら、高い信頼性を期待できるのであわせて確認してみましょう。
ヤマトシロアリの駆除を依頼するには、信頼できる業者選びが欠かせません。
「高いお金を払ったのに意味がなかった!」とならないよう、ポイントをしっかり押さえましょう。
業者へ依頼するときの費用
ヤマトシロアリの駆除費用は4,000円~1,0000円/坪程度で、30坪で30万弱くらいが目安です。
ただし、ヤマトシロアリの駆除費用は建物の状況や施工法、業者による差が大きく、一概にいくらとはいえません。
ヤマトシロアリの駆除費用において値段設定に関する決まりはないため、業者ごとに自由に決められます。
床下が狭く作業がしづらい状況や被害が深刻なほど、当然費用は高くなります。
また、一般的にコスパが良いとされるのは安くて早く効果が出るバリア工法となり、ベイト工法は2倍近くコストがかかるため、どの施工法にするかで費用に差が出ることも知っておきましょう。
業者へ依頼するときの費用は4,000円~1,0000円/坪程度ですが、あくまでも目安なので見積もりを見ながら冷静に比較してください。
ヤマトシロアリの駆除は早めに!放置すると大きな被害につながる
最後に、ヤマトシロアリの駆除をのんびり構えているとどうなってしまうのかを解説します。
ヤマトシロアリの駆除を早めにせず、放置していると以下のような大きな被害につながります。
- 耐震性が低下する
- 修繕費用がかかる
- 修繕費用がかかる
順番に見ていきましょう。
耐震性が低下する
ヤマトシロアリを駆除せず放置すれば、耐震性が低下します。
柱や壁、床材など住宅を支える部分をヤマトシロアリが食害すると、耐久性がなくなり、地震や台風などによる少しの揺れで倒壊してしまう恐れがあるからです。
事実、1995年に阪神淡路大震災が起きたときにシロアリ被害に遭っていた多くの住宅が倒壊し、その後国土交通省がシロアリに対する適切な措置を設けるよう通達しました。
(出典:国土交通省「特定行政庁建築主務部長あて」)
ヤマトシロアリはもちろん、シロアリは放置せず早期の駆除が大切です。
修繕費用がかかる
ヤマトシロアリを放置するとシロアリ被害は着実に広がり、水回りや和室、玄関などあらゆる範囲で修繕にかかる費用が発生します。
以下はシロアリ被害の一例で、このようにヤマトシロアリによって住宅をボロボロにされてしまえば、とてもそのままでは住めません。
たとえば、畳を新調するだけでも2万円前後かかり、基礎の修理となれば数十万円から数百万円に上る可能性があります。
ヤマトシロアリに食害された箇所を修繕する費用は放置するほど高額になるため、早期の対処が重要です。
資産価値が低下する
ヤマトシロアリの被害を放置すれば資産価値の低下につながるため、注意が必要です。
とくに、建物を支える柱や床材などの重要な箇所が食い荒らされて欠損した状況であれば、資産価値は大きく下がります。
仮に「黙っていたら平気かな?」と感じても、売却時に告知すべき項目のため、万が一告知しなければ契約不適合責任として契約解除や損害賠償を請求される可能性があります。
資産価値を維持するのであれば、ヤマトシロアリを見つけた段階で早めに駆除して、被害をできる限り早く食い止めなければなりません。
まとめ
ヤマトシロアリの可能性がある虫を見つけたときは、見分けたうえで、適切な駆除方法を取らなければなりません。
費用面を考慮すると自分で施工したいと考える人は多いかもしれませんが、業者への依頼が安全かつ効果的です。
ヤマトシロアリを放置すると大きなリスクにつながるため、そのままにせず早期に駆除しましょう。
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