テングコウモリとコテングコウモリの違いを徹底解説!

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テングコウモリとコテングコウモリは、どちらも独特な形の鼻が特徴のコウモリです。名前がよく似た2つの種類には、どのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、テングコウモリとコテングコウモリの違いを、見た目や生態の観点から比較して解説します。あわせて、私たちの身近に潜むコウモリの存在についても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
・テングコウモリとコテングコウモリの違い
・テングコウモリとコテングコウモリの生態
・私たちにとってもっとも身近なコウモリ
テングコウモリとは

| 学名 | Murina hilgendorfi |
| 英名 | Hilgendorf’s tube-nosed bat |
| 和名 | 天狗蝙蝠 |
| 分類 | 翼手目ヒナコウモリ科 |
| 体長 | 4.6~7cm |
| 体重 | 8~20g |
| 生息地 | 日本、朝鮮半島、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン |
| ねぐら | 枯草、葉、樹冠、樹洞、洞窟、廃坑、橋梁、民家 |
| 食性 | 昆虫 |
識別図鑑 日本のコウモリ|株式会社文一総合出版
テングコウモリとは、鼻の先が筒状に突き出ている特徴的な顔のコウモリで、昆虫食である翼手目ヒナコウモリ科の一種です。
外側に向かって伸びているユニークな鼻の形状が「天狗」を連想させるため、「テングコウモリ」と呼ばれます。
体重が8〜20gほどの小型の「ココウモリ」で、木の幹にできる空洞や枯葉などが昼間のねぐらです。
日本全域に生息しており、国外では朝鮮半島からロシア南部まで幅広く分布しています。
テングコウモリの顔

テングコウモリの顔は、天狗のように突き出た鼻が特徴的で、名前の由来にもなっています。
また、耳の穴にある軟骨の突起である「耳珠」が細長く先端が尖っており、耳の半分ほどの大きさがあります。
テングコウモリの体
テングコウモリは、体長が4.6〜7cm、体重は8〜20g程度と比較的小型なコウモリです。
背中は灰褐色の毛に覆われており、一部に金や銀の光沢のある毛が混じっています。
翼から突き出ている親指や後ろ足、さらに、腕から後ろ足にかけて広がる飛膜や、後ろ足と尾の間にある飛膜にいたるまで、体全体にびっしりと毛が生えています。
体毛が密に生えているコウモリのため、小さくてもふもふした見た目の印象です。
テングコウモリの鳴き声

テングコウモリをはじめとする昆虫食のココウモリは、めったに鳴き声を上げません。
鳴き声ではなく、超音波を頻繁に発します。長い鼻で超音波を発射し、耳で返ってくる反響音を捉えます。
テングコウモリ含むココウモリは、夜行性で極端に目が悪いため、超音波で周囲を把握しながら移動したりエサを捕らえたりしています。
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超音波は非常に高音域なため人間には聞こえません。
テングコウモリの超音波は40kHZ程度とされ、人間の耳で感知できる上限の20kHzを大きく上回る音域です。
超音波には、周波数が一定の「CF型」と大きく変化する「FM型」があります。
コウモリの超音波は、以下のとおりFM音のみを用いるFMコウモリと、CF音とFM音を組み合わせて用いる CF-FMコウモリの2種類です。
| 種類 | 特徴 |
| FMコウモリ | 周波数が大きく変化するため、獲物までの距離や角度を検出しやすい |
| CF-FMコウモリ | CF型とFM型を組み合わせて利用するため、複雑な環境での狩りに適している |
テングコウモリの場合は周波数変調型のFM型で、最初は高音から始まり、終わりにかけて急激に低音へと下がります。
超音波の音の高さが広い範囲で変化するため、物体の位置を正確に把握するのが得意です。
実際にどのような音を発しているのかを聞いてみたい場合は、「バットディテクター」という専用の機械を使います。
バットディテクターとは、コウモリの超音波を人間の耳に聞こえる周波数に変換する機械です。
コウモリの種類によって聞こえる音が異なりますが、おおむね「ピリピリ」「キィキィ」といった小動物の赤ちゃんの声のような音が聞こえます。
テングコウモリの翼

コウモリの翼は、指の間に張られた飛膜とそれを支える骨格で構成されています。テングコウモリの翼の形状は、縦横比が小さい広短型です。
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広短型の翼は高速移動や長距離移動には不向きですが、細やかな旋回やホバリングが得意です。
ホバリングによって空中で停止できるため、飛びながらエサを探せます。
また、テングコウモリが翼を広げたときの大きさは約30㎝で、テングコウモリの種類の中では最大です。
スズメが翼を広げたときの大きさが約20㎝と考えると、ずいぶん大きく感じますね。
テングコウモリのねぐら

テングコウモリが昼間や休息時に利用するねぐらは主に以下の場所です。
・枯れた草や葉、植物
・樹冠
・樹洞
・洞窟
・廃坑
・橋梁
・民家
洞窟や木の幹にできる空洞である樹洞など、他のコウモリと同じように暗い空間を好みます。
枯れて丸まった草や葉、ふんわりとした丸い形が特徴の「ホウキギ」という植物をねぐらにする場合もあります。
ほかにも橋梁や民家に棲みつくケースもあり、さまざまな場所に集団で生活しているコウモリです。
テングコウモリの集団は、10~20匹程度と、コウモリの中では比較的小さな規模で構成されます。
まれに、モモジロコウモリやキクガシラコウモリなど、別の種類のコウモリと一緒に集団を形成することもあり、出産前の3〜5月には100匹を超える大群になります。
テングコウモリの主食

テングコウモリの主食は、オサムシ、コガネムシなど飛行する小型の昆虫です。
夜間に飛んでいる昆虫や、葉の上で休んでいる昆虫を好んで捕食し、ときにはクモを食べる場合もあります。
テングコウモリは夜行性のため、日没後にねぐらを出てエサを探し、夜明け前には戻るといった生活リズムで行動しています。
しかし近年では、森林環境の変化や生息地の減少によって、コウモリの食料不足やねぐらの消失といった影響が生じることが懸念点です。
コテングコウモリとは

| 学名 | Murina ussuriensis |
| 英名 | Ussurian tube-nosed bat |
| 和名 | 小天狗蝙蝠 |
| 分類 | 翼手目ヒナコウモリ科 |
| 体長 | 3.8~5cm |
| 体重 | 4~9g |
| 生息地 | 日本、朝鮮半島、中国、ロシア |
| ねぐら | 枯葉、樹冠、樹洞、洞窟、廃坑、トンネル、雪中、民家 |
| 食性 | 昆虫 |
識別図鑑 日本のコウモリ|株式会社文一総合出版
コテングコウモリとは、昆虫を食すココウモリの一種で、テングコウモリと同じく鼻が管状に突き出ているのが特徴です。
テングコウモリよりも体が小さいため、「コテングコウモリ」と呼ばれています。
日本全域に生息しており、国外では朝鮮半島やロシア極東から中国の北西部まで、幅広い地域に生息しています。
コテングコウモリの顔

コテングコウモリの顔は、前に突き出た鼻が特徴的です。
テングコウモリの顔との主な違いは、コテングコウモリのほうが鼻の突起がやや控えめで、耳がより丸みを帯びた楕円形である点です。
耳の内側には、テングコウモリと同様に耳珠があります。
長い鼻から超音波を放射して、耳珠で反響音を捉えてエサの位置を正確に特定しています。
コテングコウモリの身体
コテングコウモリの身体は、体長が3.8〜5cm、体重は4〜9gと小型です。
テングコウモリは体長が4.6〜7cm、体重は8〜20gなので、比較すると一回り小さいサイズ。
身体は柔らかな淡褐色の毛に覆われており、腹部はより白みがかっています。
後ろ足と尾の間にある尾膜にまで毛が全身びっしりと生えており、体毛の色も相まって周囲の樹木と色がなじんで気づかれにくいです。
コテングコウモリの鳴き声
コテングコウモリはめったに鳴き声を上げず、発しているのは超音波です。
夜行性のコウモリで極端に目が悪いため、超音波を使って物体との距離をはかって移動したり、エサを捕食したりしています。
超音波は人間の耳に届く音域よりも高い周波数を使うため、通常は直接聞き取ることはできません。
コテングコウモリの超音波は非常に高音域で、出し終わるあたりの周波数は50kHz程度とされています。
コテングコウモリの翼
コテングコウモリの翼は、テングコウモリと同じく広短型です。
翼を広げたときの大きさは約20〜30cmで、小回りが利きやすく、森林のなかを器用に飛び回ります。
木々や茂みの多い場所でも素早く方向転換できるため、俊敏な動きでエサを捉えることが可能です。
コテングコウモリのねぐら

コテングコウモリのねぐらは枯葉、樹冠、樹洞、洞窟、廃坑、トンネル、民家など、テングコウモリと同様にさまざまな場所に棲みつきます。
雪の中に小さな穴をつくり、身体を丸めて冬眠するコテングコウモリも発見されています。
冬眠中のコウモリは体温を外気温とほぼ同じまで下げ、エネルギーを温存することが可能です。
このような特性から、雪中で冬眠する行動は、厳しい寒さの中でも生き延びるための生存戦略といえます。
雪の中で小さく縮こまっている姿は、なんとも愛くるしいです。
また、コテングコウモリは日ごとにねぐらを変える習性があり、移動距離の平均はオスが約100m、メスが約200mとされています。
出産・哺育期にあたる5〜7月は、10〜20匹ほどの集団で樹冠に棲みつきます。
1回の出産で1〜2匹の子を産み、約30〜35日の哺育期間を経て、子どもは自立します。
コテングコウモリの主食
コテングコウモリの主食は昆虫で、ハエやトンボ、コガネムシ、セミなどの飛ぶ虫を好みます。
夜行性のため、日が暮れるとねぐらを出て、夜明け前まで空中で昆虫を捕らえて食べます。
しかし近年、森林の伐採や木材生産を目的とした単一樹種の植林によって、コテングコウモリの採餌環境が悪化しています。
テングコウモリとコテングコウモリの違い

| テングコウモリ | コテングコウモリ | |
| 体長 | 4.6~7cm | 3.8~5cm |
| 体重 | 8~20g | 4~9g |
| 見た目 | 金や銀の混じった灰褐色の体毛 | 柔らかな淡褐色の体毛 |
| 生息地 | 日本、朝鮮半島、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン | 日本、朝鮮半島、中国、ロシア |
| ねぐら | 枯草、葉、樹冠、樹洞、洞窟、廃坑、橋梁、民家 | 枯葉、樹冠、樹洞、洞窟、廃坑、トンネル、雪中、民家 |
| 食性 | 昆虫 | 昆虫 |
テングコウモリとコテングコウモリの主な違いは、体の大きさと体毛の色です。
鼻の形状が似ている2種類ですが、見た目で見分けられます。
ここでは、2種類の違いについてポイントを解説します。
大きな違いは体のサイズ
テングコウモリとコテングコウモリのもっとも大きな違いは体のサイズです。
テングコウモリが最大で7cm程度なのに対して、コテングコウモリは大きくても5cm程度。
体重はテングコウモリが8〜20g、コテングコウモリが4〜9gと2倍程度の違いがあります。
名前に「コ」が付くとおり、コテングコウモリのほうがテングコウモリよりも明らかに小さいです。
体毛の色も見分けるポイント
テングコウモリとコテングコウモリは体毛の色でも見分けられます。
テングコウモリは金や銀の混じった光沢のある灰褐色で、コテングコウモリはふわふわの淡褐色です。
コテングコウモリには光沢がないのも特徴です。
ほかにもテングコウモリがいる!
テングコウモリとコテングコウモリ以外にも、以下の種が存在します。
・クチバテングコウモリ
この2種もテングコウモリの仲間で、鼻が筒状に突出していることが特徴です。
それぞれ体の大きさや生息域に違いがあります。
リュウキュウテングコウモリ

| 学名 | Murina ryukyuana |
| 英名 | Ryukyu tube-nosed bat |
| 和名 | 琉球天狗蝙蝠 |
| 分類 | 翼手目ヒナコウモリ科 |
| 体長 | 4.4~4.7cm |
| 体重 | 6~10g |
| 生息地 | 日本 |
| ねぐら | 枯葉、樹洞 |
識別図鑑 日本のコウモリ|株式会社文一総合出版
リュウキュウテングコウモリは日本の固有種で、奄美大島、徳之島、沖縄島にのみ生息する翼手目ヒナコウモリ科の一種です。
体は淡褐色の体毛に覆われていて、コテングコウモリにそっくりの見た目をしています。
体長は4.4〜4.7cm程度の小さいサイズです。
同じく主食は昆虫ですが、リュウキュウテングコウモリは植物の葉や地面にいる昆虫を捕らえる傾向があります。
クチバテングコウモリ

| 学名 | Murina tenebrosa |
| 英名 | Glommy tube-nosed bat |
| 和名 | 朽葉天狗蝙蝠 |
| 分類 | 翼手目ヒナコウモリ科 |
| 体長 | 5.5cm |
| 生息地 | 日本 |
| ねぐら | 洞穴 |
識別図鑑 日本のコウモリ|株式会社文一総合出版
クチバテングコウモリは日本に生息する翼手目ヒナコウモリ科に分類されるコウモリです。
1962年に長崎県対馬で1匹だけ見つかった種で、それ以降観測例がありません。
クチバテングコウモリの標本は国立科学博物館で厳重に保管されています。
見た目はテングコウモリによく似ており、体長5.5cmとリュウキュウテングコウモリよりやや大きいサイズです。
主食は昆虫で、空中を飛ぶ虫を捕らえます。
テングコウモリとコテングコウモリは絶滅の恐れがある!?
テングコウモリとコテングコウモリは絶滅の恐れがあるコウモリです。
地域によって評価が異なり、準絶滅危惧種や絶滅危惧I類などに指定されています。
それぞれの種類ごとに生息状況を解説します。
テングコウモリは多くの地域で絶滅危惧種とされている

テングコウモリは多くの地域で絶滅危惧種に指定されている種類です。
絶滅の危険度を科学的・客観的に評価した以下の環境省のレッドリストでは、地域によってランクが異なっています。
たとえば、秋田県、神奈川県、愛知県、大阪府などではすでに絶滅の危機に瀕している「絶滅危惧I類」の分類です。
絶滅危惧Ⅱ類に含まれる青森県、岩手県、栃木県などでも数の減少が顕著になっています。
また、北海道や山梨県、三重県などでは準絶滅危惧種に指定されており、生育環境の変化によっては絶滅危惧種に移行する可能性があります。
<環境省のレッドリストのカテゴリー>
| 絶滅 | 我が国ではすでに絶滅したと考えられる種 |
| 野生絶滅 | 飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ 存続している種 |
| 絶滅危惧I類 | 絶滅の危機に瀕している種 |
| 絶滅危惧IA類 | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
| 絶滅危惧IB類 | I類Aほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの |
| 絶滅危惧Ⅱ類 | 絶滅の危険が増大している種 |
| 準絶滅危惧 | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
| 情報不足 | 評価するだけの情報が不足している種 |
| 絶滅の恐れのある 地域個体群 | 地域的に孤立している個体群で、絶滅の恐れが高いもの |
コテングコウモリは一部の地域で絶滅危惧種とされている

コテングコウモリは、テングコウモリほど広範囲ではないものの、一部の地域で絶滅危惧種に指定されています。
地域によって準絶滅危惧〜絶滅危惧I類に分けられ、茨城県、神奈川県、長野県などではすでに絶滅の危機に瀕している絶滅危惧I類に分類されています。
<環境省のレッドリストのカテゴリー>
| 絶滅 | 我が国ではすでに絶滅したと考えられる種 |
| 野生絶滅 | 飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ 存続している種 |
| 絶滅危惧I類 | 絶滅の危機に瀕している種 |
| 絶滅危惧IA類 | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
| 絶滅危惧IB類 | I類Aほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの |
| 絶滅危惧Ⅱ類 | 絶滅の危険が増大している種 |
| 準絶滅危惧 | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
| 情報不足 | 評価するだけの情報が不足している種 |
| 絶滅の恐れのある 地域個体群 | 地域的に孤立している個体群で、絶滅の恐れが高いもの |
リュウキュウテングコウモリは絶滅の可能性大

リュウキュウテングコウモリは、生息地が限られているうえに数も減っている種類です。
森林伐採や開発による生息地の破壊の影響も後押しして、絶滅の可能性が高いとされています。
鹿児島県では絶滅の危機に瀕している絶滅危惧Ⅰ類、沖縄県では近い将来に野生絶滅の可能性が高い絶滅危惧ⅠB類に分類されています。
<環境省のレッドリストのカテゴリー>
| 絶滅 | 我が国ではすでに絶滅したと考えられる種 |
| 野生絶滅 | 飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ 存続している種 |
| 絶滅危惧I類 | 絶滅の危機に瀕している種 |
| 絶滅危惧IA類 | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
| 絶滅危惧IB類 | I類Aほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの |
| 絶滅危惧Ⅱ類 | 絶滅の危険が増大している種 |
| 準絶滅危惧 | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
| 情報不足 | 評価するだけの情報が不足している種 |
| 絶滅の恐れのある 地域個体群 | 地域的に孤立している個体群で、絶滅の恐れが高いもの |
テングコウモリとコテングコウモリの保全活動
絶滅の可能性があるテングコウモリとコテングコウモリ。現在、種を守るための保全活動も進められています。
ここでは、具体的な活動として森林の保全と古いトンネルの維持について紹介します。
森林の保全

テングコウモリとコテングコウモリの減少の大きな原因は、棲み処である森林が減っていることです。
彼らは樹洞をねぐらとしてよく使いますが、近年の都市開発により、樹洞をもつ大径木がどんどん伐採されています。
棲み処を保護するため、大径木の伐採を制限したり人工林の一部を残したりする活動が進められています。
さらに、テングコウモリとコテングコウモリは樹洞のみならず、枯れた木の葉や樹皮の裂け目もねぐらに使う場合も。
そのため、林業で不要な木であっても残したままにしておく活動も進められています。
古いトンネルの維持

古いトンネルはテングコウモリとコテングコウモリのねぐらとして使われますが、老朽化に伴って取り壊されるケースが多いです。
ねぐらを守るため、トンネルをあえてそのまま残したり、コウモリが利用しやすいように整備したりする取り組みが行われています。
たとえば、秋田県のダムでは、排水トンネルの片側の出入口を封鎖して人が通れないようにし、コウモリだけが出入りできる専用ドアを設置しました。
さらに内部の照度を落とし、外気が入り込みすぎないように遮断版を取り付けたところ、テングコウモリが数匹棲みついたという調査結果が報告されています。
テングコウモリとコテングコウモリの捕獲・殺傷は法律違反
テングコウモリとコテングコウモリだけでなく、野生のコウモリは鳥獣保護管理法によって保護されています。
そのため、許可なくコウモリを捕獲、殺傷することは法律違反です。
ここでは、鳥獣保護管理法の内容と罰則についてそれぞれ解説します。
野生のコウモリは鳥獣保護管理法の保護対象
野生のコウモリは鳥獣保護管理法の保護対象です。
鳥獣の保護、管理や狩猟の適正化に関する法律で、野生動物保護の観点から、無許可での捕獲と殺傷が禁じられています。
テングコウモリやコテングコウモリが珍しい種類だからといって捕まえてはいけません。
もし弱っている野生のテングコウモリやコテングコウモリを見つけたら、各都道府県の野生鳥獣担当機関に連絡しましょう。
野生のコウモリを捕獲・殺傷すると罰則がある
鳥獣保護管理法において、野生のコウモリの捕獲と殺傷は罰則の対象です。
許可なくコウモリを捕獲や殺傷した場合、100万円以下の罰金もしくは1年以下の拘禁刑が科せられる可能性があります。
殺傷行為はもちろん、棒でたたくといった傷つける行為も違反です。
もっとも身近なコウモリの存在
テングコウモリやコテングコウモリは森林にいるケースが多く、都市部の住宅街にはあまり見られません。
ここでは、住宅街で見られやすいアブラコウモリについて紹介していきます。
住宅街に現れるのはアブラコウモリ

| 学名 | Pipistrellus abramus |
| 英名 | Japanese pipistrelle |
| 和名 | 油蝙蝠 |
| 体長 | 3.7~6cm |
| 体重 | 5~11g |
| 生息地 | 日本、朝鮮半島、中国、台湾、ミャンマー、ベトナム、ラオス、インド |
| ねぐら | 民家、高架橋、地下水路 |
| 食性 | 昆虫 |
識別図鑑 日本のコウモリ|株式会社文一総合出版
人が多く住む場所に姿をみせるのはアブラコウモリです。
蚊やユスリカ、カメムシなどの小さい昆虫を主食とし、住宅街近くの雑木林や河川に採餌をしに来ます。
日中は民家の屋根裏や床下などをねぐらとし、イエコウモリとも呼ばれています。
アブラコウモリ・テングコウモリ・コテングコウモリの違い

| アブラコウモリ | テングコウモリ | コテングコウモリ | |
| 体長 | 3.7~6cm | 4.6~7cm | 3.8~5cm |
| 体重 | 5~11g | 8~20g | 4~9g |
| 見た目 | 暗褐色の体毛 | 左右に鼻が突き出ている 金や銀の混じった灰褐色の体毛 |
左右に鼻が突き出ている 淡褐色の体毛 |
| 生息地 | 日本、朝鮮半島、中国、台湾、ミャンマー、ベトナム、ラオス、インド | 日本、朝鮮半島、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン | 日本、朝鮮半島、中国、ロシア |
| ねぐら | 民家、高架橋、地下水路 | 枯草、葉、樹冠、樹洞、洞窟、廃坑、橋梁、民家 | 枯葉、樹冠、樹洞、洞窟、廃坑、トンネル、雪中、民家 |
| 食性 | 昆虫 | 昆虫 | 昆虫 |
アブラコウモリ、テングコウモリ、コテングコウモリの主な違いは、見た目とねぐらです。
体毛の色がそれぞれ異なるほか、3種類の中でテングコウモリがもっとも大きな体をしています。
ねぐらについては、アブラコウモリは民家に入り込みやすいのに対し、テングコウモリやコテングコウモリは洞窟や森林に棲みつくケースが多いです。
アブラコウモリは絶滅危惧種ではないの?
アブラコウモリの個体数は多く、絶滅危惧種ではありません。沖縄県でのみ絶滅危惧Ⅱ類に分類されています。
テングコウモリやコテングコウモリと違い、都市部でもよく見られる身近なコウモリです。
アブラコウモリは民家に棲みつく
前述のとおり、アブラコウモリは民家に棲みつくことが非常に多いです。
住宅街近くの森林や河川で採餌した後にねぐらを求めて近くの家に入り込み、そのまま棲みつきます。
体が小さいため、わずか1〜2cmの隙間からでも侵入可能です。

・屋根の隙間
・軒下の隙間
・玄関の隙間
・雨どい
・室外機のダクト
・換気口
・換気扇
・シャッターの隙間
・雨戸の隙間
屋根や軒下、換気口などの小さな隙間から侵入し、屋根裏や床下など、暗くて天敵に見つかりにくい場所に集団で棲みつきます。

・屋根裏
・雨どいの中
・室外機のダクト内
・換気口の中
・雨戸の戸袋
・シャッターの隙間
・床下
アブラコウモリは帰巣本能が強いため、一度気に入った場所に戻ってきてねぐらにするケースが多いです。
アブラコウモリの巣は一般的な鳥の巣のように枝や葉を集めて形成されるわけではなく、棲みついている場所そのものを指します。
アブラコウモリがもたらす被害

アブラコウモリが民家に棲みつくと、健康被害、住宅被害、騒音被害、悪臭被害が発生します。
それぞれの被害内容について詳しく解説します。
健康被害
アブラコウモリが民家に侵入すると、アレルギー発症や感染症など健康への被害が懸念されます。
たとえば、フンのカビや菌が住宅内に漂うと、咳や鼻炎、皮膚炎といった一般的なアレルギー症状を引き起こします。
アブラコウモリのフンはパサパサと乾燥しているため、空気中に舞いやすいです。
アブラコウモリは一匹で一晩に100匹以上も昆虫を食べるため、排泄量が多く、集団で棲みつくとフンが大量になる傾向があります。
さらに、野生のコウモリは世界的にも危険度が高いとされる病気のウイルスを保有していることが多いです。
コウモリの体やフンに直接触れると感染する可能性があり、過去には以下のような感染症を媒介した事例があります。
| 感染症 | 潜伏期間 | 症状 | 致死率 |
| SARS | 2~10日 | 発熱、悪寒、筋肉痛 ※肺炎への進行し呼吸困難に陥るケースあり |
10% |
| ニパウイルス感染症 | 4~14日 | 発熱、頭痛、目まい、嘔吐 ※意識障害、筋緊張低下、高血圧、多呼吸を発現する可能性もあり |
32% |
| 狂犬病 | 30~90日 | 発熱、頭痛、全身倦怠、嘔吐、恐水症、恐風症 | 100% |
| エボラウイルス病 | 2~21日 | 発熱、全身倦怠、筋肉痛、頭痛、咽頭痛、嘔吐、下痢、発疹 ※意識障害が発現する可能性もあり |
50% |
| ヒストプラスマ症 | 3~17日 | 発熱、頭痛、悪寒、疲労感、咳 | ほぼ0% ※免疫機能に障害がある場合は死に至る危険性あり |
野生動物はどのような病原体を持っているか不明なことが多く、人にとって重篤な感染症を引き起こす懸念があります。アブラコウモリを見つけても素手で触らないようにしましょう。
住宅被害
アブラコウモリは、住宅にも被害を及ぼします。
棲みついたコウモリの糞尿が外壁や屋根、ベランダなどに付着すると、見た目を損なうだけでなく、頑固なシミとして残ることがあります。
さらに、コウモリの糞尿には高濃度の尿酸が含まれており、木材の劣化を早める点にも注意が必要です。
大量のフンや尿が天井裏や壁内に堆積すると、木材や断熱材などが腐食して耐久性が低下し、建物の劣化を早める原因になります。
騒音被害
アブラコウモリによる騒音も深刻な被害の1つです。
アブラコウモリは夜行性のため、夕方から夜間にかけて活発に活動します。
滅多に鳴き声をあげませんが、危険を察知すると「キィキィ」と甲高い声を発する場合も。
また、夜間にコウモリが天井や壁の隙間を腹ばいで移動する際、断熱材と体がこすれて「カサカサ」と音がします。
コウモリが集団で棲みつくると、騒音がひどくなり睡眠を妨げられるかもしれません。
悪臭被害
コウモリが棲みついている場所に排泄された大量のフンから悪臭が発生します。
アブラコウモリのフンのニオイは、ドブ臭とアンモニア臭を混ぜたような独特の酸っぱいニオイです。
糞尿を放置していると、湿気と混ざることでカビが発生し、悪臭をさらに悪化させます。
悪臭が建物内部に染みつくと、不快感だけでなく、シロアリやノミ、ダニ、ハエなどの害虫を引き寄せる原因にもなります。
アブラコウモリによる悪臭被害は放置せず、早めに対処するのが重要です。
アブラコウモリが棲みついたら駆除しよう
アブラコウモリの被害を最小限に抑えるため、棲みついたら早めに駆除する必要があります。駆除するにあたり、正しい知識と手順を把握しておきましょう。
アブラコウモリも捕獲・殺傷NG
アブラコウモリは、テングコウモリやコテングコウモリと同様に鳥獣保護管理法で守られています。
野生のコウモリの捕獲・殺傷は禁止されているため、傷つけず殺さずに追い出すしかありません。
具体的な手順について紹介していきます。
駆除手順①巣の場所と侵入経路を特定
アブラコウモリを駆除する際、まずは巣の場所と侵入経路を特定しましょう。
フンが落ちている場所や悪臭がする場所を手がかりにすると、巣を見つけられます。
また、アブラコウモリの行動が活発になる日没20〜30分後から夜間にかけて、出入りしている場所を観察すると侵入している隙間を特定しやすいです。
アブラコウモリはわずか1〜2cm程度の隙間からでも侵入できるため、細かな部分までチェックしましょう。
侵入経路を把握しておくと、駆除後の再侵入を防ぐ対策が立てられます。
巣や侵入経路については、こちらの解説も参考にてしてみてください。
駆除手順②駆除道具の購入
アブラコウモリの駆除にあたって、必要な道具をそろえておきましょう。主な駆除道具は以下のとおりです。
駆除するのに高所作業がともなう場合に使うこれらはホームセンターやネット通販でも購入できます。
駆除手順③アブラコウモリを追い出す
アブラコウモリを追い出すには、侵入経路の隙間から忌避スプレーを噴射します。
忌避スプレーはコウモリが嫌がるハッカやワサビの成分が使用されているため、散布して追い出すことが可能です。
集団で棲みついている場合、一気に飛び立つこともあるため、驚いて転倒しないように注意しましょう。
特に高所や狭い場所での作業では、万が一の事故に備えて、長袖と長ズボンを着用するとともに、不安な方はヘルメットも被っておくと安心です。
駆除手順④巣の清掃と消毒
アブラコウモリを追い出したら、棲みついていた場所を清掃して消毒します。
フンには病原菌やウイルスが含まれているため、放置すると健康被害につながる可能性があります。
まずはハンドクリーナーでフンを除去し、次に雑巾に消毒液を染み込ませて丁寧に拭き取りましょう。
スプレー型の消毒液を使う場合は、直接噴きかけると残っている菌やカビが空気中に舞い上がる恐れがあるため、消毒液を雑巾に含ませてから拭き取る方法が安全です。
清掃、消毒作業の際も、菌やウイルスを吸い込んだりフンに触れたりしないよう、マスクと手袋の着用が必要です。
駆除手順⑤侵入経路を塞ぐ
巣を清掃、消毒したら、侵入経路を塞ぎましょう。
アブラコウモリは帰巣本能が強く、侵入経路を塞がないと追い出した後もすぐに戻ってくる可能性があります。
アブラコウモリを確実に追い出したことを確認した後、小さな隙間も金網やコーキング剤で完全に塞ぐのがポイントです。
たとえば、屋根や軒下、室外機のダクトの隙間など、密閉しても問題ないところは、コーキング剤や害獣パテで塞ぎます。
換気口や換気扇など、密閉すると生活に支障がでる場所は目の細かい金網で塞ぎましょう。
また、追い出す前に塞ぐとアブラコウモリを閉じ込めてしまうため、封鎖する前に巣の中に残っていないか必ず確認しましょう。
あわせてアブラコウモリの苦手なものを用いて再来対策も行います。嫌がるニオイを発する置き型の忌避剤やハッカのニオイを、侵入経路になりやすいシャッターや雨戸の隙間、換気口などに置いたり散布したりすると効果的です。
自分での対応が不安ならプロに依頼
アブラコウモリの駆除は、必要な道具がそろっていれば基本的に自分でも対応できます。
ただし、大量に棲みついている場合や被害が広範囲に及んでいるケースでは注意が必要です。
特に高所での作業は落下の危険性があり、屋根裏や床下に入り込む場合は点検口を設ける必要があるなど手間がかかるケースもあります。
また、アブラコウモリを実際に目にするのが怖い方や、感染症への不安を感じる方も少なくありません。
そのため、自力での駆除が難しい場合はコウモリ駆除の専門業者のプロに依頼するのがおすすめです。
専門の技術と豊富な経験をもとに、巣の場所を問わず作業を行い、アブラコウモリを一匹残らず追い出したうえで、再発防止策までしっかりと対応します。
まとめ
テングコウモリやコテングコウモリはどちらも突き出した鼻が特徴的なコウモリです。
樹洞や枯葉などをねぐらにしていますが、森林伐採や都市開発の影響でいずれも数が減少しており、一部の地域では絶滅危惧種に指定されています。
一方で、私たちの身近にいるのはアブラコウモリです。テングコウモリやコテングコウモリと違って民家に棲みつくケースが多いコウモリで、さまざまな被害をもたらします。
もしアブラコウモリの被害に悩んでいる場合は、ぜひコウモリ駆除のプロにお任せください。害虫害獣コンシェルジュでは、豊富な経験を高い技術を活かして徹底的に駆除し、再発防止策まで一括で対応します。
まずはお気軽にご相談ください。
- 現地調査・お見積り:無料
- 忌避液散布:19,800 円/30㎡まで
- 侵入口閉鎖作業:500 円/箇所~
- 清掃作業:2,200 円/㎡
※現地地調査・お見積りは対応エリア・加盟店・現場状況等により記載内容の通りには対応できない場合がございます。
害虫害獣コンシェルジュは、害虫害獣に関する正しい知識を発信し、厳格な品質管理基準をクリアした害虫害獣駆除のプロとのマッチングサービスを提供するサイトです。編集部では「自分でできること」と「プロに任せるべきこと」を明確にし、依頼前の不安解消を目指しています。
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