川の主・マスクラット|謎の多い生態と被害拡大リスクを解説

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日本の河川や池を中心に分布を広げている大型のネズミ、マスクラット。
ぱっと見では何の動物かわからない方が多く、謎に包まれている存在です。
マスクラットは80年以上も前に海外から輸入された特定外来生物で、生息数増加による被害が懸念されています。
この記事では、マスクラットの詳しい生態と、被害のリスクについて解説します。
あわせて、マスクラットよりも身近なネズミについても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
・マスクラットの生態
・マスクラットが及ぼす被害
・身近なネズミの存在
マスクラットとは

| 学名 | Ondatra zibethicus |
| 英名 | Muskrat |
| 和名 | マスクラット |
| 分類 | げっ歯目ネズミ科マスクラット属 |
| 体長 | 20cm~30cm |
| 体重 | 600g~1kg |
| 生息地 | 北アメリカ、日本 |
| 棲み処 | 河川、湿地、沼地 |
| 食性 | 雑食 |
マスクラットは、北アメリカ原産の大型のネズミで、戦前に持ち込まれたことがきっかけで野生化した外来種です。
肛門の分泌物のニオイがジャコウ(musk)という香料に似ていることから、「Muskrat」と名づけられました。
国内では東京都、埼玉県、千葉県を中心に東日本に多く生息しています。
マスクラットは特定外来生物
マスクラットは、人間の生命や生活に被害を及ぼす可能性がある外来種として、2006年に特定外来生物に指定されました。
第二次世界大戦前、航空機パイロットの毛皮用に北アメリカより輸入され、東京都江戸川区で養殖、飼育されていましたが、戦後野外に放たれたことがきっかけで野生化し、現在も生息しています。
マスクラットの見た目

マスクラットはネズミだと思えないほど体が大きく、体長は20cm~30cm程度、尻尾まで含めると50cm~60cm程度にまで及び、イタチと同程度かやや大きいくらいです。
茶色、黒褐色、黒色と色濃く短い体毛がびっしりと生えていますが、河川で泳いでびしょびしょに濡れている姿を目撃することが多いため、近くで見ても毛質までははっきりとはわからないでしょう。
マスクラットの棲み処

マスクラットは、水中の草むらや岸に奥行1m程度の巣穴を掘ります。
巣穴は、食事するところとトイレがわかれているほか、換気口までつくられています。

巧妙につくられた巣ですが、この穴が原因で海外では深刻な水害が起こった事例も。
詳しくはこちらで解説しています。
マスクラットの主食

マスクラットの主食は、水生植物であるヨシ、ガマ、ヒツジグサなどで、巣に持ち帰って食べます。
そのほか、ザリガニや貝、小型の魚などの水生生物も好む雑食です。
マスクラットの繁殖

マスクラットは通年繁殖が可能で、1年に5回程度出産します。
繁殖活動が盛んなのは3月と11月で、多いと一度に10子も産むことがあり、気温が高いほど子どもの数が増えるといわれています。
超人レベル?泳ぎが得意なマスクラット

マスクラットが河川を泳ぐ通常時の速度は、時速2.2km~4.4km程度で、コイと同じくらいのスピードです。
身の危険を感じて逃げるときは時速6.1kmにも到達し、北島康介選手が2008年の北京五輪の男子100m平泳ぎ決勝で当時の世界記録である58秒91を出した際の平均時速と同等です。
マスクラットとヌートリアの違い

マスクラットとよく似たヌートリアという大型のネズミもいます。
ヌートリアも海外から持ち込まれ、日本で野生化した外来種です。
見た目も棲み処もほとんど同じである2種の違いを解説します。
見た目の違い
| マスクラット | ヌートリア | |
| 体長 | 20cm~30cm | 40cm~48cm |
| 体重 | 600g~1kg | 4kg~11kg |
| 体毛の色 | 茶色、黒褐色、黒色 | 暗褐色 |
| 体毛の長さ・質 | 短毛で密に生えている | 剛毛で粗い |
マスクラットとヌートリアは、顔つきも体毛の色も酷似しているため、見た目で判別するのは困難です。
比較ができるのは体格で、ヌートリアのほうが大きく、体長は尻尾まで含めると70cm~80cm程度で、体重はマスクラットの10倍程度にまで及びます。
棲み処の違い
棲み処もほとんど同じで、2種とも河川や沼などの水辺に巣穴をつくり、巣の見た目もほぼ変わりません。
ただし、ヌートリアはゆったりと泳ぐ習性があり、比較的流れがゆるやかな河川や湿地を好みます。
食性の違い
マスクラットとヌートリアは食性もほとんど同じで、好む水生植物が一部異なる程度です。
| マスクラット | ヌートリア | |
| 水生植物 | ヨシ、ガマ、ヒツジグサ など | ホテイアオイ、ヨシ、ヒシ、マコモ など |
| 水生生物 | ザリガニ、貝、小魚 など | 貝、魚 など |
前述のとおり、ヌートリアはマスクラットに比べて流れがゆるやかな場所に棲みつく傾向があるため、湖、沼、池に生育する水生植物を食べるほか、水辺周辺の農作物を食べ荒らすことも。
生息域の違い

マスクラットとヌートリアは、見た目も棲み処も、食性も似ていて判別が難しい2種ですが、決定的に違うのは生息域です。
| 生息域 | |
| マスクラット | 東京都、埼玉県、千葉県を中心とした東日本 |
| ヌートリア | 大阪府、兵庫県、岡山県を中心とした西日本 |
関東地方を中心に東日本に多いのがマスクラット、近畿地方を中心に西日本で多いのがヌートリアです。
原産国の環境の違いによって生息地がわかれていると考えられており、北アメリカ原産で寒さに強いマスクラットは東日本でも快適に過ごすことができますが、
ヌートリアは南アメリカ原産で寒さに弱く、あたたかい環境を好むために西日本に分布しています。
マスクラットが及ぼす被害
マスクラットは、巣穴が洪水の原因になったり、農作物を食べたりするなど、害獣としての側面ももっています。
洪水

前述のとおり、マスクラットは水中の草むらや岸に奥行1mもの巣穴をつくります。
多くの巣穴が原因で堤防が決壊して河川の水が溢れ、洪水が発生する危険があり、2008年にアメリカのミズーリ州でミシシッピ川が氾濫して、住宅が流されるほどの災害に発展しました。
日本ではマスクラットの巣穴による洪水はまだ起きていないものの、生息数が増加すると同様の被害が発生する可能性があります。
食害

マスクラットによる水生植物への食害が、複数発生しています。
30年以上前には、レンコンの栽培が盛んであった千葉県市川市で、ハス田で葉や茎をマスクラットが食べ荒らす事件が多発し、多くの農家に被害を及ぼしました。
現在もなお、東京都葛飾区の水元公園では、園内の池のハスやアサザへの食害が起きており、自然環境保全のために、自治体による侵入防止対策が検討されています。
マスクラットを見かけたらどうする?
マスクラットを見かけても、物珍しさから触ったり、害獣だからといって自己判断で捕獲したりせず、自治体に情報提供しましょう。
触ったり近づいたりしない

マスクラットは、人間にとって不衛生な用水路や沼などの水場を移動しているため、病原体を保有している可能性があります。
不用意に触れると、噛みついたり襲いかかったりする場合も。
健康被害にあわないために、マスクラットを見かけても素手で触ったり近づいたりしないようにしましょう。
特定外来生物のため捕獲・飼育NG

マスクラットは、人間の生命や生活に被害を及ぼす懸念がある外来種である特定外来生物に指定されています。
特定外来生物を無許可で捕獲、運搬、飼育することは禁止されており、違反すると1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金が科されます。
「珍しくて可愛いから」「害獣だから被害が広がらないように」という理由で、自己判断で捕まえてはいけません。
自治体に情報提供する

マスクラットを見かけたら、自治体の担当部署へ情報を提供しましょう。
目撃した場所の住所を共有したり、スマートフォンで写真を撮影して送ったりするなど、なるべく詳細に伝えてください。
マスクラットの数が増加している地域では、駆除を行う場合があります。
目撃情報が多い東京都、埼玉県、千葉県の窓口および連絡先は以下のとおりです。
| 担当部署 | 連絡先 | |
| 東京都 | 東京都環境局 外来生物関連、シカ対策 | 03-5388-3506 |
| 埼玉県 | 埼玉県環境科学国際センター 生物多様性保全担当 | 0480-73-8361 g7383318@pref.saitama.lg.jp |
| 千葉県 | 千葉県環境生活部 自然保護課 生物多様性センター | 043-265-3601 webmaster@bdcchiba.jp |
マスクラットより身近なイエネズミ3種
マスクラットは市街地の河川に姿を現しますが、住宅に棲みつくことはありません。
しかし、マスクラットと同じげっ歯目で住宅を棲み処とする3種のイエネズミがいます。
・クマネズミ
・ドブネズミ
・ハツカネズミ
クマネズミ

| 学名 | Rattus tanezumi |
| 英名 | Black rat |
| 和名 | 熊鼠 |
| 分類 | げっ歯目ネズミ科クマネズミ属 |
| 体長 | 15cm~17cm |
| 体重 | 150g~200g |
| 生息地 | 東南アジア、日本 |
| 食性 | 雑食 |
クマネズミは、黒色や灰色などの暗い体毛をもち、尻尾を含めると30cm~40cmにも及ぶネズミです。
イエネズミのなかでもっとも運動能力に優れ、壁、柱、配管をのぼって高所に棲みつくのが特徴です。
ドブネズミ

| 学名 | Rattus norvegicus |
| 英名 | Norway rat |
| 和名 | 溝鼠 |
| 分類 | げっ歯目ネズミ科クマネズミ属 |
| 体長 | 14cm~20cm |
| 体重 | 150g~500g |
| 生息地 | 世界各地 |
| 食性 | 雑食 |
ドブネズミは世界各地に生息し、住宅街や繁華街にエサを求めてしばしば姿を現します。
地面に近い水場を好み、下水道や地下水路を棲み処にすることも。
住宅に侵入すると、クマネズミとは対照的に床下や排水溝など低くてジメジメした場所に棲みつきます。
ハツカネズミ

| 学名 | Mus musculus molossinus |
| 英名 | Japanese house mouse |
| 和名 | 二十日鼠 |
| 分類 | げっ歯目ネズミ科ハツカネズミ属 |
| 体長 | 6.3cm~9.2cm |
| 体重 | 10g~16g |
| 生息地 | ユーラシア、北アメリカ、日本 |
| 食性 | 雑食 |
ハツカネズミは、尻尾を含めて10cm~15cm程度、体重が10g程度の小柄なネズミです。
天敵から身を守るため、狭く入り組んだ場所を好み、住民が知らない間に住宅のわずかな隙間に棲みつくことがあります。
イエネズミの侵入経路と棲み処
イエネズミはわずかな隙間や亀裂から内部に侵入し、種別にそれぞれ好む環境に棲みつきます。
イエネズミの侵入経路

・軒下の隙間
・外壁の穴、隙間
・基礎のひび、隙間
・通気口
・配管の隙間
・室外機のダクトの隙間
・雨戸の戸袋
・網戸
・換気口、換気扇
・分電盤
・排水管の隙間
イエネズミは2.5cm以上の隙間があれば、簡単に住宅内に侵入します。
築10年以上が経過すると、外壁、基礎、そのほか多くの住宅設備が劣化しはじめ、ひびや亀裂が生じやすくなり、放置しておくとどんどん隙間が広がる場合も。
長年リフォームをしていない住宅はイエネズミに侵入される可能性があるでしょう。
イエネズミの棲み処

・屋根裏
・天袋
・壁の中
・キッチン
・洗面所、トイレ
・家具、家電の隙間
・押し入れ、クローゼット
・床下
・倉庫
・排水溝
イエネズミが棲みつきやすい場所は上記のとおりですが、種類によって好む環境が異なります。
クマネズミが棲みつきやすい場所

・天袋
・壁の中
・押し入れ、クローゼット
前述のとおり、クマネズミは運動能力が高く、壁、柱、配管をのぼって高いところに棲みつきます。
具体的には、屋根裏、天袋のほか、移動する途中の壁の中、2階以上の押し入れやクローゼットなど人目につきにくい場所です。
ドブネズミが棲みつきやすい場所

・洗面所、トイレ
・床下
・排水溝
・倉庫
ドブネズミは、地面に近い多湿な環境を好み、キッチン、洗面所、トイレ、排水溝などの水回りのほか、床下や屋外の倉庫などに棲みつく場合があります。
ハツカネズミが棲みつきやすい場所

・キッチン
・家具、家電の隙間
・押し入れ、クローゼット
・倉庫
ハツカネズミは、体が小さいために、家具や家電の隙間、壁の中などわずかな空間に棲みつくことが多いです。
押し入れ、クローゼットなどの収納スペースの奥まった場所に巣をつくる場合もあります。
イエネズミが及ぼす被害
イエネズミが棲みついた場合、食品被害や悪臭被害、健康被害などさまざまな被害にあう可能性があります。
食品被害

イエネズミは3種とも雑食のため、人間の食べ残し、生ゴミ、備蓄食料などを好き放題食べ荒らします。
特に気を付けたいのは米やレトルト食品などの備蓄食料で、硬い歯で袋を食い破って中身を周辺に散らかし、住宅の汚染につながる場合も。
悪臭被害

ネズミは移動しながら排泄する習性があり、住宅のさまざまな場所で糞尿を出し、ツーンとするアンモニア臭を充満させます。
ストレスが溜まるだけではなく、悪臭により吐き気、頭痛などの体調不良を引き起こすことも珍しくありません。
健康被害

ネズミはさまざまな病原体の媒介主であり、接触すると以下の感染症にかかる危険があります。
| 疾患名 | 潜伏期間 | 症状 | 致死率 |
| 鼠咬症 | 1日~21日 | 悪寒、発熱、嘔吐 など | 約10% |
| レプトスピラ症 | 5日~14日 | 発熱、悪寒、頭痛 など | 5%~15% ※黄疸がある場合 |
| サルモネラ感染症 | 8時間~48時間 | 嘔吐、腹痛、下痢 など | 0.1%~0.2% |
また、イエネズミは下水道やゴミ捨て場など人間にとって不衛生な場所に出入りすることから、ダニやノミなどの寄生虫を保有している可能性があります。
イエネズミに触れて寄生虫に刺された場合、激しいかゆみ、発疹などに襲われるかもしれません。
住宅被害

ネズミは前歯が一生伸び続けるため、硬いもので歯を削る習性があり、住宅に棲みつくと建材、配線、電源ケーブルなどをかじります。
建材はもろくなって耐久性が低下する恐れがあるほか、配線、電源ケーブルをかじられると、停電したり漏電して最悪の場合火災に発展する可能性も。
騒音被害

イエネズミが住宅に棲みつくと、活動音や鳴き声に悩まされます。
「カリカリ」という建材をかじる音、「トトト」と走り回る音、「キーキー」という鳴き声を集団で発します。
イエネズミは18時~6時に活動する夜行性で、人間が就寝する時間とかぶるため、騒音によって寝不足になって体調を崩す可能性も。
害虫被害

前述のとおり、イエネズミは生ゴミ、食料品を食べ荒らします。
あふれたゴミや食品に、ゴキブリやハエなどの害虫が誘引され、住宅の衛生環境が悪化します。
撒き散らされた糞尿に寄ってくる場合もあり、住宅内のあちらこちらで害虫が発生するかもしれません。
イエネズミの駆除方法
もし自宅にイエネズミが棲みついたら、捕獲、殺傷、追い出しのいずれかで駆除します。
イエネズミは殺傷・捕獲OK
野生の動物は鳥獣保護管理法によって無許可での殺傷と捕獲が禁止されていますが、イエネズミの3種は人間に深刻な被害を及ぼすことから、鳥獣保護管理法の保護対象外です。
殺したり捕まえたりしても罪に問われません。
捕獲する方法

こちらで紹介した侵入経路や棲み処に、粘着シートや捕獲器を設置して捕まえる方法です。
捕獲した時点で死亡していない場合、粘着シートを折りたたんで圧死させるか、捕獲器であれば水をはったバケツにカゴごと沈めて溺死させます。
死骸は、可燃ゴミや一般廃棄物など自治体の区分に従って処分しましょう。
殺鼠剤を使う方法

殺鼠剤とは、イエネズミの食性にあわせてつくられた毒餌です。
粘着シートや捕獲器と同様に侵入経路や棲み処付近に設置して、イエネズミを死亡させます。
食べたらすぐに死ぬタイプと、少しずつ食べてじわじわと死に追いやるタイプのほか、巣に持ち帰らせほかのイエネズミにも食べさせ、一網打尽にするものもあります。
殺鼠剤にオリーブオイルやソースなどニオイの強い調味料をかけると引き寄せやすいです。
イエネズミが死亡したら、捕獲した場合と同様に自治体の区分どおりに捨てましょう。
燻煙剤を使う方法

イエネズミの死骸を自分で処理したくない場合は、燻煙剤で追い出しましょう。
屋根裏や床下など広い空間でも、隅々まで煙が行きわたるため便利です。
薬剤が、周辺の壁や床、家具や家電に付着しないように使用前にビニールで養生し、使用中は煙を吸いこまないように離れた部屋で待機します。
自分で駆除できない場合はプロに依頼
市販グッズを使っても駆除できない、いくら試してもイエネズミが出る場合は、自力で対応できる範囲を超えているため、ネズミ駆除のプロに依頼しましょう。
死骸を処理したくない方や、感染症にかかるのがこわい方も専門のプロに任せるほうが安心です。
まとめ
マスクラットは、河川や池に生息する大型のネズミで、巣穴による洪水や水生植物への食害が懸念されており、害獣としての一面をもっています。
東京都、埼玉県、千葉県を中心に東日本の市街地で姿を見かけることがありますが、住宅には侵入しません。
一方で住宅に入り込んで棲みつくのが、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミの3種のイエネズミです。
わずかな隙間から侵入して食品被害や悪臭被害、健康被害などを及ぼします。
もし自宅にイエネズミが棲みついたら、被害が拡大する前に害虫害獣コンシェルジュにご相談ください。
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